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承継物件の実力は?親子承継2つの医院の収入比較
〜親子承継は得か損か〜

今回のテーマは、最近増えている承継開業のうちまず「自己所有物件による親子承継」を取り上げてお話致します。事例の二つのクリニックは、東京都郊外と千葉県郊外という立地の違いはありますが、診療科・規模や収支概要など、承継前はほぼ似通った経営状況にありました。それぞれ承継後にそれぞれどのような推移を辿ったか、以下にご紹介致します。

page1 突然の承継?数年前から携わりながらの承継?
page2 承継1年目から生じる所得差の理由はここにあった!

突然の承継?数年前から携わりながらの承継?

Kクリニック概要

Kクリニックは東京都郊外、最寄りのJR駅からは徒歩10分程の立地にある消化器内科のクリニックです。周囲の環境は住宅地、クリニックは3階建て自己所有物件の1階部分で、2階及び3階は自宅となっています。

父である前院長は長年多くの患者さんを診てきた愛着のある地域で、息子に跡を継いでもらい、この場所を有効活用して欲しいという思いが強くありました。K院長は都内の大学病院をはじめ複数の病院勤務をしていましたが父の勧めもあり、通常の開業に比べ建築費や内装、設備費などのイニシャルコストが掛からず、建物も前院長の所有のため改装費の支出が相続税対策になることも後押しとなって、あまり悩まずKクリニックをいわゆる“親子承継”し開業することに決めました。

◆継承後の推移

Kクリニックは、父である前院長の「引き続き診療及び経営の両面からしっかりサポートしていきたい」という強い思いから院長交代後も常時2診体制で診療を行うことになりました。しかし承継後の患者数は思いの外伸びず、常勤二人体制のクリニックとしては不足感のある状況が続きました。

■経営数値 (金額単位:千円)

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◆承継2年後の可処分所得

新生Kクリニックの承継初年の医業収入(経営数値-A)は、二診体制にもかかわらず承継前と比べて減少しています。二人の医師がお互いの機能を生かせず診療を続けた結果、クリニック全体として単純な足し算の効果も得られず、さらに折角の経営刷新の機会も生かせませんでした。
承継前の単年の可処分所得(経営数値-P)は1,370万円あり、承継後もこの数値を回復できずにいますが、承継2年目の終盤より名誉院長が診療日を週3日に減らし、主導権を徐々に院長に渡してからは医業収入・可処分所得とも上向く結果となりました。


Lクリニック概要

Lクリニックは千葉市郊外、最寄りのJR駅からは徒歩15分程の立地にある戸建ての消化器内科クリニックで、周囲は古い住宅と新しいマンションなどが混在する地域で診療圏は比較的広い状況にあります。当地は先代院長である父が約35年前に個人医院として開設し、地域柄、駐車場も含めてかなりゆったりとしたスペースを使って診療を行っていました。
新院長のL先生は大学病院をベースにいくつかの関連病院で勤務医を続けてきましたが、今回かねてからの予定通り、実家を継ぐ形で地元に戻り開業することになりました。

◆承継後の推移

前院長である父が比較的高齢ということもあり、院長は数年前から病院勤務をメインとしながらも父の診療所で週に1〜2日程度診療を行っていました。そのため実態としては落差のないシームレスな承継ができ、初年度から順調に患者数を増やす結果となりました。また、承継2年目にはクリニックの新築に踏み切ったことで結果的には更に患者数を伸ばすことにつながり、医院経営は順調な推移をたどっているといえます。

■経営数値 (金額単位:千円)

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◆承継2年後の可処分所得

承継1年目(9ヶ月間)には既に患者数の増加により実質的に医業収入(経営数値-A)がしっかりと増加し、さらに承継2年目にはクリニックの新築により更に一段の患者数増加を実現し収入を増加させています。 新築クリニックの家賃を父に支払う(経営数値-G)とともに内装工事や医療器機などの設備投資によりリース料(経営数値-H)及び減価償却費(経営数値J)は増加しましたが、可処分所得(経営数値-P)は承継前1,450万円に対し承継1年目で既に1,610万円と本稿の基準値をクリア。承継2年目に2,510万円を確保するに至っています。積極的な投資を経て、承継後の経営は想定以上に順調に進んでいるといえます。

両クリニックとも、承継時の経営状況は同じでしたが承継1年目からその差はすでに生じはじめます。東京都と千葉という立地条件は異なりますが、それだけではなくLクリニックにはきちんとした理由がありました。 後編ではそれぞれの誤算、成功要因を解説します!

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