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クリニックの事業収支をケース毎に比較検討どうなる収入!
手取り収入の多寡につながるなぜ?を解説
収入=患者さんの確保。そのための戦略
3年後、そこには可処分所得にして2400万!の差が!
開業前に、しっかりと方針を固めた2つのクリニック。Cクリニック院長の高度で確かな技術の腕も地域では求められていたはずです。誤算の要因はどこにあったのでしょう?
―2つのクリニックの比較表 ―
■経営数値 (金額単位:千円) CDクリニック比較表拡大→
Cクリニックの誤算
誤算要因1 連携ニーズの誤認や準備の不足
蓋を開けてみると、専門性を求めて病院から移ってくる患者さん、紹介される患者さんともにそれほど多くなく、高価な内視鏡の稼働率はなかなか上がらなかった。週に2コマの内視鏡検査の日はとりあえず1コマにしたが、そこにも予約はあまり入らない状況が続いた。
- 病院のクリニックに対するニーズの中心はオペ後の管理や指導にあり、内視鏡検査そのものは紹介に至らなかった。
- 病院の教授や後輩ドクターとのこまめで地道な情報交換ができておらず、積極的に逆紹介を進められる環境を作る配慮が不足していた。 また医師会の入会が予定より遅れ、初年は公費負担のある予防接種や健診を行えなかった。
- 直接の収入面への影響のみならず、これらのイベントは患者さんに来て貰うきっかけであり、繁忙期の冬を迎えても患者数が思うように増えない間接要因にもなった。
誤算要因2 自院のターゲットとすべき患者の満足度
“専門性の高い医療の提供”を意気込んで準備したC院長は、風邪など専門外の一般の患者さんに対しては無意識に今ひとつ熱の入らない対応となっていた。これは、3年目で来院患者数が伸びずに相談したコンサルタントが、企画・実施した「患者満足度調査」から判明した。
- クリニックに求められる機能は、第一にプライマリケアの患者層への丁寧な対応であり、大学病院等の外来とは患者層や期待される役割が違っていた。
- クリニックの満足度判断で圧倒的に重要な要因は「医師の対応」であり、先生に安心感を得られない患者さんは決して再来にならず、口コミによる増患にも繋がらなかった。
Dクリニックの成功要因
成功要因1
D院長の専門は消化器内科だったが、クリニックには昨今主流の「専門を前面に出した名称」をあえて付けず、患者さんに対してもなるべく間口を広げて対応した。専門外の疾病や不定愁訴の患者さんにもできる限り丁寧に対応し、その結果、春から夏にかけて内科の患者さんが減少する時期にも来院数は減少することなく維持され、冬場を迎える頃には家族ごとかかりつけとなった患者さんで待合室が連日賑わう状況となった。
- まずは親切な診療を心がけてファンを増やすことを目指し、また「患者さんの目を見て」「相槌を打ちながら」「患者さんのお話を整理し要約する」など、患者コミュニケーションの基本を徹底して実践した。
- スタッフとの意思疎通改善にも常に留意し、自分の思いを伝え、意見を汲み上げ、フィードバックすることを心掛けることでより一層の患者さんへのサービス向上を目指した。
成功要因2 地道な増患対策
間口を広げた診療には、やはり紹介先病院との有機的な連携が必須。院長は良好なパイプを維持するため、紹介した患者の様子や顛末などは常に気を遣って確認し、また逆紹介の患者さんに関しては治療の経過情報などをこまめに提供することで病院の先生の安心感を確保することを心掛けた。
- 紹介患者に対するクリニックの重要な必要機能は予後管理であり、状況に応じて患者さんを病院外来に返すことを前提に対応した 。
- 病院の連携室からの問い合わせなどには常にきちんと対応し、患者さんの家庭復帰を目指して地域の各機関との連携にも積極的に協力した。
結果として、当初目標であった一日平均患者数30名を1年目でクリアし、次のステージへ向かって戦略を練る余裕を持つことができた。
ワンポイント:分析と改善戦略
今回の事例は、収入=患者さんの確保のための戦略的な方法の違いに焦点を当て紹介いたしました。 新規開業の際にすべきことはまず冷静に環境を分析し、地域において自院に求められる機能がどこにあるかを判断して的確に実践することになります。
Dクリニックは当初からニーズを敏感に拾い上げ、自院を素早く適応させていったのに対し、C内科クリニックは客観的な情報収集と環境認識が不足しており、求められたサービスの提供ができていなかったといえそうです。
現在は徐々に専門性が発揮されつつあるC内科ですが、当初の環境下では、まず地域の医療機関として認知度を上げることに注力すべきでした。
また、逆紹介は往々にしてクリニックの期待値を下回ることが多く、医療制度の動向なども踏まえながら、病院や地域から求められる連携の形を常に探って対応していくことが今後ますます重要になってきます。そして、求められる機能をしっかりと果たすことで紹介も自然と増えていき、さらに患者さんの口コミを生み出して良い循環が生まれることに繋がるといえます。
患者数の確保はもっとも重要な経営ファクターですが、いろいろな要因が影響してなかなかねらい通りに行かないことも多く、だからこそ「可処分所得1500万円」の獲得のためには、より確率の高い成功因子をできるだけ多く用意することが大切になっていきます。
(文責:税理士法人アフェックス)