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開業ドクターから学ぼう開業ケーススタディ
開業後の診療所経営について具体的ケースを検証し
経営改善につながる対策を『処方箋』として解説します。
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法人によるサテライト経営戦略
第11回では、医療法人制度の活用しサテライト経営を成功させた ケースをご紹介します。 医療法人の利点としては税務的な部分がフォーカスされることが 多いのですが、運営上のメリットにも注目し整理するとサテライト 経営に実にピッタリとくる部分も多いようです。 今回ご紹介するケースでは4つのポイントを整理し解説します!
エピソード1 | 閉院するクリニックから継承話が。。-皮膚科・整形外科クリニック紹介 |
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エピソード2 | 分院展開の検討。医療法人でのメリットは?-問題点に対する処方箋 |
閉院するクリニックから継承話が。。-皮膚科・整形外科クリニック紹介
地域に指示され繁盛するクリニックだが問題は税制面。経費の使い方に割り切れない思いが。
皮膚科・形成外科クリニックのケース
Kクリニックの概要
項目 | 内容 |
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標榜科目 | 皮膚科・形成外科 |
院長 | 50歳 |
開設日 | 平成15年 |
所在地 | 東京都西部 |
クリニックの概要 | 一日患者数120人 |
交通アクセス | 私鉄線駅徒歩5分商業地域 |
スタッフ | 非常勤医師含め11名 |
経営形態 | 個人 |
Kクリニックの環境等
Kクリニックは、郊外に延びる私鉄沿線の駅前に約7年前に開業した皮膚科のクリニックで、オリジナルの漢方処方と丁寧な診療が患者さんから好評を得ており、また出身医局の協力の下でパート医師による複数診療体制をとるほか、形成外科の日帰り手術なども行っています。
クリニックの1日の平均患者数は繁忙期を除いても約120人程度と順調な経営状況を維持しており、まだまだ新患も見込める状況にあると言えます。特に小児の湿疹やニキビ、アトピー性皮膚炎などの疾患に悩んでいた患者さんからの感謝の声もネット上で多く寄せられており、クリニックの診療スタイルが地域に広く支持を集めていることが伺えます。
そのような中である時、地域の医師会で親しくしている皮膚科のS先生から、体調を崩して近々クリニックを閉院する予定であることを聞きました。S先生は隣駅の駅近で古くから開業している年配の先生で、年々患者さんも減ってきたことも閉院を決意した理由でしたが、できれば評判の良いK院長に自院を継いで貰いたいという希望を持たれていたのです。
S医院は、施設的には古いのですがロケーションは良く、また地域的にもKクリニックの患者さんにも利便性があることから、K院長は非常に興味を持ちました。そしていろいろと情報を得るにつけ、地域に実績のある自分が分院としてうまく運営すれば必ず成功する手応えを感じたのです。
また分院展開に最も重要な医師の確保に関しても、従前から勤務している医局の後輩ドクターの協力が得られそうです。完全な独立開業でなく、基本的な経営面のリスクを負担せずに成果も得られれば分院の先生にもメリットがあり、お互いのニーズが合致するため何とかそのような方法がないかを考慮することとなりました。 ここでポイントは次のような点です。
- 新たな設備投資やスタッフ確保など、経営の実質はK院長が行って後輩ドクターは分院長として診療を行う
- 分院長の給与は「固定給+患者数や診療報酬を基準とした歩合」を考えている
- Kクリニックで処方している軟膏は治療効果が高いと評判を得ており、これまで院内ですべて調剤してきたことから、そのレシピやで培われた診療上のノウハウなどは外に持ち出されないように契約や制度化したい
- パート勤務の若手ドクターで他にもグループ内独立を希望する人が何人かおり、今後チャンスがあれば分院を増やしていくことが自然な展開となりそうである
このような事項を踏まえて今後とも無理なく拡大していくためにはどのようにしていったらよいか、当初は比較的簡単に考えていたK院長でしたが、いろいろと考え進めていくにつれて不明な点が沸いてくる状況で、ついに考えあぐねた末、開業時から付き合いのあるコンサルタントにアドバイスを求めました。そしてそこから紹介された専門家に相談したところ、「医療法人による運営」を熱心に勧められたのです。
これまでも法人化の話を聞く機会はあったのですが、個人形態でも特段問題ないためあまり真剣に検討してきませんでした。しかし今回はどうも様子が違います。体制が複数となり拡大していく場合には全体をきちんと管理することが不可欠となりますが、今の医療制度や保険診療のルール上、個人形態のクリニックでそれを行っていくことは難しいのが実情のようです。医療法人の利点は税務的な部分がフォーカスされることが多いのですが、運営上のメリットを生かすことでKクリニックの目指す方向性にピッタリとくる制度だということでした。
総括
近年、開業の次のステップとして医療法人化を考えるのは一般的になってきており、またその実情も個人医院と殆ど変わりがなく運営されているのですが、Kクリニックのような場合に医療法人体制での経営形態が優れているのは、いったいどのような点からなのでしょうか。 そしてその後この医療法人制度をどのような形でKクリニックが活用し展開していったのかについて、後半で詳しくお話ししていきます
(文責:税理士法人アフェックス 旧 税理士法人町山合同会計)