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開業後の診療所経営について具体的ケースを検証し
経営改善につながる対策を『処方箋』として解説します。

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労務管理の見直しによる経営改善

院内の風土改革がもたらしたものは?ー問題点に対する処方箋

患者満足度向上のために院内プロジェクトチームが行った事は?


問題点に対する処方箋

1.現状の把握調査

社会保険労務士のアドバイスにより、院長はまずはスタッフの現状把握を行うこととしました。職員が日々の業務の中でどのような不満をいだいているのか、その不満は改善可能な問題なのかを測るため、書面によるアンケート調査を実施することにしました。面接方式も検討しましたが、院長との人間関係が良好とは言えず正直に話してくれないことが予想されたので今回は断念しました。その様な理由から、アンケートは(1)匿名にすること、(2)記載内容によって不利益に扱わないこと、を職員に説明したうえで本音を記入してもらうようお願いし実施したのです。

そしてその後、スタッフから寄せられた回答は下記のようなものでした。

  1. 頑張っているのに評価してもらえない
  2. 有給が取りづらい
  3. 昇給額の決め方が不明確・不公平
  4. 常勤になりたいのになかなかなれない
  5. 院長には話しかけづらい雰囲気があり、思ったことがなかなか言えない
  6. 特定のスタッフが不真面目で仕事が非常にやりづらい

院長には想定外の回答ばかりでしたが、このような不満が根底にあったことに気付かされ、初めてスタッフの本音に触れた気がしたのでした。

2.院内の風土改革

アンケート結果を検証すると主に「労働条件に関すること」と「職場環境に関すること」の2点に分類することができます。労働条件についてはクリニック独自のルールが存在していたが不明確であり、職場環境については職員の意見が取り入れられづらい状況にあったようです。

そこで、改善策を検討した結果、以下を実践することにしました。

(1)就業規則等の作成
就業規則は常時10人以上の職員を雇うと作成義務が生じますがFクリニックではそこまでの職員がいなかったため就業規則を作成しておりませんでした。しかし労働時間ひとつとっても曖昧な状況であり、お互いにはっきりしないと支障があることがいろいろとあったことから、職場ルールを明確にわかりやすくするため就業規則を作成し、基本的な労働条件を明確にしました。
またあわせて給与規定を制定し、職位や経験年次ごとの基本的な待遇の基準を作成するとともに昇給等の判定基準を作り、賞与と昇給の時期には「どのような点が評価されているのか」「どの点が不足しているのか」を個別面談でなるべく客観的に伝えることとしました。

(2)院内ミーティングの実施
これまでFクリニックでは朝礼を週に一度行っていたのみで、そこでは院長が一方的に事務的な伝達を行うのみでした。これを改善し、昼休み後の時間と診療終了後の時間をそれぞれ週に一度短時間ミーティングに充て、院内で生じたことを何でも報告することとしました。パートスタッフも多いことからこれが意外に有効なコミュニケーションとして働き、院内の風通しがよくなったようです。

(3)患者満足度向上のプロジェクトチーム結成
地域で患者に選ばれることは、経営サイドの財政面はもちろんのこと、そこで働くスタッフにとってもやりがいや充実感に直結することから非常に重要な目的となり得ます。

選ばれるクリニックとなるためにはどうしたらよいか、さらに医療人である以前に人としてどのように患者さんに接すれば満足度を向上させることができるのか、を考え実践するプロジェクトチームを常勤のスタッフ中心に数名で立ち上げ、そこを中心に職員同士で自由に意見を交わせる場を設けました。この場は職員のみの参加とし、院長は報告を受けて承認をするのみです。

患者満足度向上のための工夫や改善提案は意外にも多く寄せられ、改めて現場スタッフの秘めた思いに気付かされました。また実施にあたってスタッフ自ら発想し提案した改善点は積極的に行動に移すことから、この方法の優位性に改めて驚いた院長でした。

(4)院外コミュニケーションの充実
日々の診療やクリニック運営の業務などで多忙となってしまうため、職員とのコミュニケーションはどうしても院内での業務連絡に終始しがちでした。経営者と職員という固い関係を崩すのは容易ではありませんが、院外での食事会やイベントを企画したところ概ね好評で、スタッフ主導のコミュニケーションが生まれることで院長との距離も確実に縮まったように思います。

(5)意見箱の設置
患者さん向けにクリニックに対しての意見箱を設置しているところは数多くあります。しかし、クリニック内部で同様の意見箱を設置しているところは少ないかと思います。Fクリニックでは当初院長に物申しづらい雰囲気があったため、口頭での意見を集める代わりに文書で意見が言える場を設けました。ただし、いわゆる“チクリ箱”のような存在にならないよう、あくまで冷静に客観的に受け止めることをきちんと伝えました。

3.風土改革がもたらしたもの

徐々にではありましたが院長の思いは職員に浸透してきました。数ヵ月後に実施した同様のアンケートでも職員からの不満が減るとともに院長の努力を評価・感謝するコメントも現れ、院内は明らかに雰囲気が変わってきたことが実感できるようになってきたのです。

特定のスタッフの入れ替えと前後して退職者は一気に減少し、院内は開業当初の活気を取り戻したようです。そしてそれは患者さんの増加としても現れ始め、風土改革から1年を待たずして一日患者数は100人を超える日も出てきました。

またさらに、クレーム処理や新規採用にかけていた時間や経費を削減することができたため、これらの資源をより有効に次の改善に使えるようになったことも大きいといえるでしょう。

総括

職場風土の改革にはなかなか着手しづらいものです。長年かけて形成されたものであればある程、保守的な考えが先行してしまい思い切った改革にためらいが生じてしまうことがあります。そのため、職員にくすぶった不満を見逃しがちになってしまうのです。

「人事は永遠の問題」ともいわれますが、明確な課題がある場合はもちろん、経営に停滞感がある場合には労務管理の観点から解決策を見出してみることも一考かと思われます。

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