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開業ドクターから学ぼう開業ケーススタディ
開業後の診療所経営について具体的ケースを検証し
経営改善につながる対策を『処方箋』として解説します。
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労務管理の見直しによる経営改善
第6回目では、開業後、先生方の一番の悩みともなる「スタッフ労務管理」についてご紹介します。開業前に診療圏調査等を実施、想定患者層にあわせバリアフリーにするなどハード面では万全の準備で開業をむかえたはずが、患者さんからはたびたびのクレームが・・。その原因はハード面ではなく、別のところにありました!
エピソード1 | 開業一年でつまづいた人事の問題-整形外科クリニック紹介 |
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エピソード2 | 病院の風土改革がもたらしたものは?-問題点に対する処方箋 |
医療モールに高い集患効果を期待したがー整形外科クリニック紹介
新患が増えず頭を悩ませていた院長が気づいた点は?…
整形外科クリニックのケース
Fクリニックの概要
項目 | 内容 |
---|---|
標榜科目 | 整形外科、リウマチ科 |
専門 | 整形外科 |
院長 | 男性 42歳 |
開設日 | 平成20年1月 |
所在地 | 東京都郊外 |
クリニックの概要 | テナントビル1階(60坪) 診察室1、処置室2、エックス線室、リハビリテーション室 |
専用駐車場 | あり(8台) |
交通アクセス | 駅 徒歩20分の住宅街 |
スタッフ | 看護師2名、PT・リハビリ助手・事務6名(パート職員含む) |
経営形態 | 個人 |
薬剤処方 | 院外処方 |
Fクリニックの環境等
最寄り駅からやや離れているものの、住宅地に囲まれ緑の多い環境のなか周辺には保育園や小・中学校があり、比較的人口の多い立地条件にあります。
車での来院が多いことを想定し、専用駐車場はクリニックの目の前に近隣クリニックと比べて多めのスペースを確保しました。また院内は完全バリアフリーとし、診療所が交通量の多い道路に接していることを考慮して入り口の自動ドアの手動ボタンを高い位置に設定することにより、子供の飛び出し事故を防ぐなど、工夫をこらしています。
他方、医院広告はバス停前であるためバスの社内広告を中心に、(1)電柱看板(2)駅構内看板(3)入口の看板を設置(4)ホームページを開設しそれぞれ自院のコンセプトに合ったロゴマークとQRコードを盛り込むことにより他院との差別化を図りました。
Fクリニックの収支状況
月間数値 | 直近の実績 | 当初事業計画 |
---|---|---|
一日あたり患者数 | 50 人 | 100 人 |
診療単価 | 3,200 円 | 3,000 円 |
医業収入 | 352 万円 | 660 万円 |
薬品費等 | 42 万円 | 75 万円 |
人件費 | 138 万円 | 140 万円 |
家賃・リース料 | 60 万円 | 60 万円 |
その他経費 | 58 万円 | 50 万円 |
差引利益 | 54 万円 | 335 万円 |
借入返済 | 33 万円 | 33 万円 |
差引収支 | 21 万円 | 302 万円 |
経営者になり初めて人を雇った院長は、当初近隣のクリニックや知り合いの先生の意見を参考にしながら診療時間や給与を決めていました。またコストアップは痛かったものの社会保険などもきちんと加入しており、職員への期待と労務トラブル防ぎたい思いから労働環境はしっかり整備したつもりでした。
しかし、スタッフコントロールは全く思うように行かず、わずか1年で開業当初の職員はすべて退職してしまったのです。原因について院長に特に思い当たる節はなく、しばらく様子を見ていたのですが、院内の雰囲気は患者さんに伝わるものでたびたび接遇に関してクレームを受けることがありました。そしてそれが直接の原因か不明ではあるものの、当初順調に増え続けていた患者さんがある時期を境に徐々に減っていったのです。
その状況に危機感を持ち、院長は募集条件の改善を実施する一方でスタッフに直接注意・指導するなど考えられる対策をいろいろ講じてみたのですが、どれも効果が出ているように思えず、院内のムードは沈滞したままです。
悩んだ結果、開業コンサルタントから紹介された病医院専門の社会保険労務士にアドバイスを求めることとし、専門家の視点から経営改善に真剣に取り組むことにしました。
総括
人事の問題は、経営を揺るがす大問題になることを身をもって実感した院長でしたが、その後専門家の力を借りて最優先課題として対峙することとなります。この後、Fクリニックがどのように改善の道へ進んだか、後半でご紹介します。
(文責:税理士法人町山合同会計)