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開業ドクターから学ぼう開業ケーススタディ
開業後の診療所経営について具体的ケースを検証し
経営改善につながる対策を『処方箋』として解説します。
開業時に多くの先生方が開設するクリニックのホームページ。
基本情報や医院の雰囲気を紹介する「広報」機能としての役割を果たしているものが多い中、ホームページを戦略的に活用することで経営に大きく差がでるようです。
駅の近くに開業したBクリニック(皮膚科)では、落ち着きのある内装、スタッフ教育にも力をいれており、目だった問題点はないようであるが患者数は1日あたり40名程度と順調な推移とはいえない。
自院に何が不足しているのか、自問自答の中で経営を続けていた・・・。
エピソード1 | ホームページは「広報」ページ!? ―皮膚科クリニックケース紹介 |
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エピソード2 | ホームページは「戦略的」コミュニケーションツール ―問題点に対する処方箋 |
FILE 002
広告戦略② ホームページの戦略的活用
ホームページは「広報ページ」!? ー皮膚科クリニックケース紹介ー
ホームページは開設しているが開業以来更新したことはありませんでした・・・。
皮膚科クリニックのケース
Bクリニックの概要
項目 | 内容 |
---|---|
標榜科目 | 皮膚科、アレルギー科 |
専門 | 皮膚科 |
院長 | 男性 46歳 |
開設日 | 平成20年4月 |
所在地 | 東京23区内 |
クリニックの概要 | テナントビル2階(35坪) 診察室1、処置室2 |
専用駐車場 | なし |
交通アクセス | JR駅 徒歩8分 |
スタッフ | 看護師1名、受付事務員3名(パート職員含む) |
経営形態 | 個人 |
薬剤処方 | 院外処方 |
Bクリニックの環境等
都内JR駅に近く、周辺は一般企業や飲食店等が入居しているビルが多い、いわゆる駅前繁華街の開業パターン。昼間人口は多いものの、この地に居住している夜間の人口は少ない状況である。
Bクリニックは、立地の利便性を考慮して専用駐車場は確保せず、その分内装工事に費用をかけた。自費診療も念頭に置き院内の雰囲気に高級感を持たせたいとの思いがあったためである。院長自身の構想は固まっていたが、それでも友人の診療所を視察していろいろと検討し、最終的には木目基調の落ち着きのある内装とした。洗面所も他と比べると女性向きに広くし、パウダールームは2席、プライバシーに配慮する形で設置した。
また、スタッフについては、患者さんに対し親切丁寧であるよう徹底しており、実践できていると思われる。また院内清掃についても常時気をつけており、その面でも目立った問題点はないようである。
一方、医院広告としては(1)電柱看板(2)駅構内看板(3)ビル壁面・入口の看板を設置した。壁面看板は決して大きくはないが、デザインにこだわって内装業者とは別の業者を選定し、自院のコンセプトに沿ったものを制作した。
またホームページも開設し、医院の雰囲気や装備している医療機器、また自費診療に係る情報もきちんと案内しており、興味を引く内容になっていると自負していた。
経営状況
月間数値 | 実績 | 事業計画 |
---|---|---|
一日あたり患者数 | 38人 | 80人 |
診療単価 | 3,400円 | 3,500円 |
医業収入 | 285万 | 616万円 |
薬品費等 | 20万円 | 49万円 |
人件費 | 109万円 | 115万円 |
家賃・リース料 | 80万円 | 85万円 |
その他経費 | 35万円 | 40万円 |
差引利益 | 41万円 | 327万円 |
借入返済 | 20万円 | 20万円 |
差引収支 | 21万円 | 307万円 |
実績は開業より18ヶ月経過時点の月額事業計画は開業前の18ヶ月後の予測数値
開業当初の患者数は1日あたり10名前後、2年経過の現在は平常期で40名程度であり、皮膚科クリニックとしては順調な推移とはいえない。患者本位の診療スタイルには自信があるものの、伸び悩みの原因がどこにあるのか、自問自答の日々だった。
気付きのきっかけは院内食事会で最近採用したスタッフから聞いた話であった。 「先日、家族のケガで整形外科を探したのですが、最近越してきたばかりでまだどこに行って良いかわからずインターネットで探しました。“○○駅 整形外科”で検索して選びました。とても見やすくきれいなホームページだったので。」別のスタッフからは、「娘がかかっている小児科はいろいろと便利です。携帯電話で予約ができるし順番待ちもわかるし。」
翻って、自分自身も買い物やサービスを求める場合にはまずネットでキーワード検索して情報を得るのが半ば習慣化している。自院が対象とする患者層が医療を受けようとする場合にまずどのように行動するのか、またどのような利便性を求めているのかを考えてみると、これまでその視点が抜け落ちていたことにここで気付かされたのである。
自院のホームページは開業当初から開設しているが、その後は手を加えておらず、またそこからの集患がどの程度かはほとんど把握していなかった。このことから、自院の大切な患者層となるサラリーマン・OLのクリニック選定ルートに乗っているのかどうか、不安を覚えた院長は行動に出たのであった。
総括
患者さんの医院選びに際し、多様化する情報化環境を前にBクリニックはどうするべきなのでしょうか。次回は院長がこの状況にどのように対応し、結果がどのように現れてきたかをご紹介します。
(文責:税理士法人町山合同会計)