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開業ドクターから学ぼうみんなの本音
患者・スタッフ・家族...
開業医をめぐるそれぞれの本音とは?
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家族の本音―突然の開業浪人生活!物件を見つけるまでの長い1年
大木さん(仮名)50歳の場合
開業直後は医療事務スタッフの1人として、毎日出勤し夫を助けていた大木さん。
法人化をきっかけに専業主婦から理事へ、生活が大きく変わった大木さんの日常とは?
夫の強い希望があったため、開業準備中に医療事務の勉強をして、開業と同時にスタッフの1人として働き始めました。
医療事務スタッフは私を含めて3人で、個人クリニックでの経験が豊富な方と、大学病院での勤務経験はあってもクリニックは初めてという方に来ていただくことにしました。
私は勉強をしただけで、実務経験ゼロですから、お二人に言われたことをやるだけで、全く戦力になっていなかったと思います。
院長の妻というだけで毎日役に立たないスタッフが通ってくるのですから、他のスタッフにとってはいい迷惑だったかもしれないですね。
できるだけ邪魔にならないように、うるさいだけの存在にならないようにと心がけました。
夫はどちらかというと、診療だけをやっていたいタイプです。
事務仕事が苦手なので、そういうこまごまとしたことを私に任せたかったようです。
朝、一緒に車で通勤する時にスタッフに伝えてほしいことを私に言うんです。
昼休みも同じで、二人で食事をしながら午前中の診療で気付いたことを話すので、その内容を私からスタッフに伝達していました。
医療事務の仕事をするというよりは、スタッフと院長の橋渡しをするのが私に求められている役割ということに気がついてからは、医療事務としてでしゃばるより、院長の影武者のように裏方に徹することにしました。
開業して3年後に医療法人にし、私も理事になりました。
それを機に、医療事務スタッフの1人としてカウントしてもらうのをやめてもらいました。
とはいえ、夫の希望があるので、朝は夫をクリニックまで車で送っていき、私はいったん家に帰ります。
家の用事をすませた後、私用がなければ一緒にお昼ご飯を食べるためにクリニックに行き、また家に帰ります。
夜も、スタッフが帰ったあとに行く往診につきあうために、またクリニックへ行きます。
ですから、日に最低でも2回、多い時は3回クリニックに顔を出し、そのたびにスタッフと顔をあわせ、必要なことを話すと帰ってきています。
実は、夫は車の運転ができません。だから、私を運転手がわりにしているのです。
もともと私は専業主婦でしたから、開業でスタッフとして働くことで生活パターンが大きく変わりました。
でも開業時には、子供たちは中学生と高校生になっていましたから、母親の帰宅が多少遅くなっても戸惑うことはなかったです。
むしろ、母親の干渉から解放されてほっとしていたかもしれませんね。
他に開業によって変わったことといえば、長期のお休みが取りにくくなったことです。
勤務医時代、夏休みは2週間ほどありましたから、よく家族旅行に行きましたが、今は無理です。
でも子供たちも家族旅行についてくる年齢ではなくなってしまいましたので、休みが取れないことに対する不満はないです。
育児に手がかからなくなってからの開業は、私や子供たちにとってちょうど良かったです。
夫も「準備は体力的にきついから、あと5年遅かったら開業する気になれなかっただろうな」と話していますので、あらゆる点で開業のタイミングが来ていたのだと改めて感じています。
開業をする際、準備万端整えてから退職するケースが多い中、まず退職してから準備を始めるケースも少なからず見受けられます。
前者は家族の同意を得やすく、後者は多忙を極める医師にとっては、準備に時間をかけられるなど、それぞれにメリットがあるようです。
今回ご紹介したのは後者を選択した医師のケースですが、家族のライフスタイルの変化と開業のタイミングがマッチし、妻の協力も得られ、順調に開業に成功した事例といえそうです。
あるアンケートで、開業時に苦労したことを聞いたところ、そのベスト3は、「物件探し」「職員採用」「資金調達」だったそうです。次回は、そのうちの2つを「身をもって実感した」と語る医師のご家族が登場します。