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メディカルツーリズム
- メディカルツーリズムの今後
欧米、中南米、アジア、中東、アフリカで受け入れているメディカル ツーリズム。
日本における今後のメディカルツーリズムの可能性、 医院経営との関係は?
メディカルツーリズムの今後
欧米、中南米、アジア、中東、アフリカで受け入れているメディカルツーリズム。日本における今後のメディカルツーリズムの可能性、 医院経営との関係は?
1.メディカルツーリズムの需要
日本政策投資銀行の報告書によるとメディカルツーリズムをおこなっている国は、欧米ではアメリカ、ドイツ、ハンガリー、中南米ではメキシコ、コスタリカ、ブラジル、アジアでは韓国、台湾、シンガポール、タイ、マレーシア、中東ではドバイ、アフリカでは南アフリカとなっています。
それぞれの国で受け入れているメディカルツーリズムの医療サービスとツーリストの居住場所には特長があります。例えば、ハンガリーは世界で一番医療ツーリズムを受け入れていると言われていますが提供している医療サービスは歯科治療であり、米国からの患者さんが約半数とも言われています。アジアのメディカルツーリズムを受け入れている国では、心臓やがんなどを中心に医療が提供され、アジアや中東からの富裕層を受け入れています。メディカルツーリズムを積極的に受け入れているタイでは、アラブ首長国連邦からの受け入れが約4割となっています。因みに、タイのメディカルツーリズムの約5%は日本からだという事実もあります。
アジアの諸外国の状況を見ていくとメディカルツーリズムを受け入れている各国の外貨獲得のための国をあげての政策と国際化する民間病院グループの努力により受け入れ人数が拡大していると考えられます。
2.日本におけるメディカルツーリズムの可能性

日本では、人間ドックなどの健康診断を中心とするメディカルツーリズムを伸ばそうという動きがあります。しかし、世界的なメディカルツーリズムのトレンドを見る限りでは、他国より安く医療を提供するのか、高度先進医療を提供するのかといった二極化の方向にあるようです。日本では人間ドックといった健康管理で世界から患者さんを呼ぼうとしたときには、費用的な面で厳しい側面があると考えられます。
理由は、アメリカなどの医療費が高額な国では、健康診断などの予防医療を安く提供することで病気にならないような医療活動が活発であり、日本の人間ドックとそんなに変わらない費用で提供されていることもあります。先に、紹介した日本政策投資銀行の報告書では、日本の健診はアメリカの価格の85%程度としています。予防医療の先進国がこの程度の値段では、わざわざ飛行機に乗って旅費をかけて日本で健康診断をする必要性を感じられないのかもしれません。
3.国際医療交流
メディカルツーリズムという言葉の方が一般的になっていますが、厚生労働省はあくまでメディカルツーリズムを認めていません。医療崩壊が言われ医師不足や看護師不足と言われている現在において外国から患者さんを受け入れるのは、もってのほかと言われています。疲弊していると言われている医療現場にこれ以上医療サービスを提供する余裕は基本的にないはずでもあります。
そこで、2010年の閣議決定された新成長戦略の中で厚生労働省は、メディカルツーリズムの富裕層や一部の医療機関が先行していることについて問題視し、「国際医療交流」という名でメディカルツーリズムではない外国人患者さんを受け入れる体制整備を始めました。
この国際医療交流は、外国人に提供される健診・医療機関の質の確保や日本の医療のブランド力向上、外国人医師・看護師による国内診療等の規制緩和の検討・実施、医療の国際化推進、世界的に優れた水準の介護機器、生活支援ロボット、障害者用装具等の開発・販売による国際的な交流を目指しています。
実際には、外国人患者受け入れ医療機関の認証制度整備について動き出しつつある程度となっています。
4.医院経営とメディカルツーリズム
医院経営とメディカルツーリズムというとあまり関係のないような気がします。しかし、実際には日本国内でも何年も前からメディカルツーリズムが行われてきました。最初のメディカルツーリズムは、日本国内におけるPET健診でした。2000年頃にPETを購入する医療機関が増加しました。当時のPETは、サイクロトロンを必要としたため投資金額が高額となっていました。そこで、国内旅行とPET健診をセットにしたツアーが旅行会社から売り出されたのです。温泉と美味しい食事がセットになった人間ドックは、話題にもなりました。
現在では、国外の患者さんや健診を受ける人向けに高度な医療機器を装備した富裕層向けの医院も登場しています。これらの医院は、日本の大手企業などのバックアップにより設立され運営されています。また、これらの医院は外資系企業の駐在員向けに自費での診療や健康管理も行っています。
これから医院経営とメディカルツーリズムを考えると患者さんを受け入れるのではなく、患者さんを紹介することも1つかもしれません。日本における外国人は約213万人います。これまで都市部を中心に住んでいた外国人も田舎に住むようになってきました。そのため、外国人が医療機関を受診することも珍しくありません。メディカルツーリズムでなくても患者さんが国際化しています。そこで、先に説明したメディカルツーリズムにおける外国人顧客の受け入れの問題点を頭に入れながら外国人と接していくことが参考になるのかもしれません。
外国人が大挙して日本の医療を受けにくることは考えにくいのですが、医院経営をしている限り外国人が受診する機会はあると思いますので、こちらの記事が参考になればと思います。
参考文献:
経済産業省,国際メディカルツーリズム調査報告書,平成21年度サービス産業生産性向上支援調査事業
http://www.meti.go.jp/policy/servicepolicy/H21%20medical%20tourism%20report.pdf
日本政策投資銀行,進む医療の国際化-医療ツーリズムの動向-
http://www.dbj.jp/topics/report/2010/files/0000004549_file2.pdf
(文責:木村憲洋)