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開業準備「虎の巻」開業トレンド
医院開業マーケットを様々な切り口で分析
これからの開業はどうなっていくのか?
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医療政策と開業トレンド(各論)
- 今時の診療所の開業
開業数横ばい=開業に歯止めではない。一般診療所開業数が増えない理由は?
1. 医療政策による医療機関経営の変化
医療政策による医療機関経営の変化は、開業に影響を与えることは間違いありません。そこで、今時の一般診療所の開業について紹介したいと思います。前編で説明したように一般診療所の増加が2007年から横ばいになりました。しかし、横ばいになったといっても開業に歯止めがかかっているわけではありません。
表2の2008年10月から1年間の開業は4536件となっています。一般診療所数が増えないのは、開業が抑制されているのではなく、廃止と休止の一般診療所が多くなっているからなのです。
開設 | 廃止 | 休止 | 再開 |
---|---|---|---|
施設数 | 施設数 | 施設数 | 施設数 |
4,536 | 3,678 | 514 | 208 |
表2 平成2008年10月から平成2009年9月
国民医療費の増加を抑えるために診療報酬が少しずつ厳しくなっています。しかし、実際には大病院へ診療報酬を優先的に配分しているため一般診療所や中小病院にとっては厳しい配分となっています。
さらに、レセプトの電子化に代表されるように様々な環境変化が一般診療所を継続させるには厳しい時代なのかもしれません。
2. 開業の在り方の変化
開業の在り方が変化しています。これまで一般診療所にできるだけ医療機器を装備し、幅広い診療を行っている医療機関が多かったかもしれませんが、近年では身軽に開業している医療機関も珍しくありません。如何にリスクを減らし、特定のサービスに特化するかがポイントとなります。

開業リスクとバリエーションを図1のように表現すると右上円のように、診療のバリエーションを多くすると経営リスクが高くなります。これは、様々な診療に対処するために医療機器や医薬品などの投資が必要となり、経営リスクが高まります。一方、診療を絞ることで投資を減らすことができるため開業後の経営リスクは低くなります。
近年の一般診療所の開業で在宅医療専門クリニックの開業が増えているのもこのような観点に合致します。因みに、在宅医療専門のクリニックであれば、外来を行わないため診療所のスペースも狭く済み、医療機関に設置する検査機器などの設備投資も最小限で済みます。さらに、前回の医療政策で説明したように在宅医療は病院における入院と比較して医療費がかからないようになっているため収入も優遇されています。
3. 総括
在宅医療専門クリニックだけではなく、様々なリスク分散することで開業リスクを減らすような工夫をしています。
これからも厳しい診療報酬が見込まれる中では如何にリスクを減らし、開業するのかが求められています。
(文責:木村憲洋)