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実際に開業を経験したドクターの声をお届けする開業医のリアルストーリー VOL4
女性に人気の街、自由が丘駅のほど近くで今年5月に開院したのが「自由が丘ちあきレディースクリニック」です。院長の飯塚千祥先生は、大学勤務と子育てを両立させながら開業の準備をしました。その過程で直面した壁や解決策、開業後の手応えなどをうかがいました。
プロフィール
自由が丘ちあきレディースクリニック
- クリニック名
- 自由が丘ちあきレディースクリニック
- 科目
- 婦人科
- 所在地
- 東京都目黒区緑が丘2-24-15 1階
- 開業年月日
- 2019年5月
- スタッフ
- 看護師5名(常勤1名、パート4名)、医療事務3名(常勤2名、パート1名) 外勤医師1名
クリニックの特徴など
――院内の広さと間取りを教えてください。また、内装で工夫された点は?
広さは35坪です。手術室を設けていないので、十分ゆとりのある広さです。そこに診察室が2つと処置室があります。 内装は、女性らしさが過度にならないように心がけました。あまりにフェミニンだと、小さいお子さんや高齢の方は落ち着かないですよね。ですから明るくて、患者さんがリラックスできる雰囲気になるように壁の色を選びました。
診察室の壁を温かみのあるピンク色の素材にしたところ、「いい色ですね」と言ってくれる患者さんが多いんです。
――こちらのクリニックの強みは、何だとお考えでしょうか。
私は家族性腫瘍専門医として、最前線のがん治療を熟知しています。
家族性腫瘍は全がんの10%を占め、海外では身内ががんになると遺伝子検査を受けることが当たり前になっています。しかし日本では、専門医も診断や治療をできる施設も多くありません。
大学病院などでは、患者さんご本人には抗がん剤の選択のための遺伝子検査が実施されるようになってきたものの、患者さんのご家族については調べられていません。
親子でがんになって初めて、「私ががんになりやすい家系だったなんて知りませんでした」と話される。一方で、検査を受けたいと思っても、どこで受けたらいいのかわからない人も少なくないようです。
大学病院でそんな状況を見ていたので、開業にあたっては、院内で家族性の乳がんと婦人科がんの検査を行える体制を整えようと思っていました。月に1回、家族歴についてうかがったり遺伝子検査の説明などを行ったりする家族性腫瘍のカウンセラーも来ます。
身近なクリニックで検査ができたら、「遺伝子検査を受けるべき人が受けていない」という状況を改善できると思います。
――強みは豊富なキャリアですね。
ただ、患者さんの多くは、医師のキャリアなんて気にしないですよね。最初に来院したときの受付の対応、診察時の医師のひとことふたことで、クリニックとしての良し悪しを判断されると思います。
その点、うちの事務の方たちは患者さんに自然な笑顔で接してくれますし、診察後は患者さんに「笑顔」で帰ってもらうことを私の目標にしています。
――婦人科腫瘍専門医でもいらっしゃいますね。
はい。その点も、当院の強みです。腫瘍専門医でないと行うことの少ない、コルポスコープを使った子宮頸がんの精密検査を行っています。また、週1回、子宮頸がんや子宮体がん、卵巣がんなど、婦人科のがんをご専門にしている先生にも来ていただいています。 10月以降は、もう1人、腫瘍専門医が週1回来てくれます。
手術室がないだけで、大学病院の外来診療と同等かそれ以上の医療は提供できます。現に大学病院から「あそこなら精密検査も手術の判断もできる」と、術前術後の経過観察を任されることが多いです。もちろん、再発したらすぐに大学病院で手術してもらいますから、理想的な病診連携だと自負しています。
一方で、私は内分泌疾患も得意としているので、がんだけでなく、患者さんをトータルに診られるのも、当院の強みだと思っています。
例えば先日は、生理不順で1年間も生理がないという患者さんが来られました。他のクリニックで相談したこともあったそうですが、「生理不順ですね、様子をみましょう」で終っていた。しかし私は経過観察ではいけない症状だと判断したので、すぐに内膜組織診をしたところ、その女性は子宮内膜増殖症という前がん状態であることがわかったんです。急いで大学に送った結果、掻把手術だけで済みました。
――患者さんにとって幸いでしたね。
はい。「見つけてもらってよかった」と言ってもらいました。私も、「来てもらってよかった」とお話ししました。
がんになる前の段階で発見することはクリニックの役目だと思います。また、生理不順がなぜ起こっているのか、甲状腺機能に異常はないか、脳腫瘍はないか。それを調べるのもクリニックの役目だと思います。でも専門医でないと、重篤なケースを想定せずに目先の症状の改善だけで終ってしまうことも多いようです。
一方、大学病院のような専門性が高い機関では、領域が細分化されてしまい、例えば不妊症の背景に子宮内膜増殖症があるにもかかわらず、見落とされたまま排卵誘発を繰り返していたということもあるものです。
患者さんをトータルに、かつ専門的に診療できる身近なクリニックである当院の強みを生かし、こうした医療の隙間で見過ごされる患者さんを減らしたいと考えています。