- 開業に関する欠かせない情報が満載
これから求められるのは、どんなかかりつけ医?
報酬改定が施行され、診療所の大幅減収を危惧する声も。
これから求められるのはどんなかかりつけ医なのでしょうか。
EPISODE 001
脂質異常症、高血圧、糖尿病の3疾患の患者さんに注目
管理料は診察したらもらうもの
診療報酬が改訂されて1カ月ほど経ちました。 これまで「特定疾患療養管理料」を算定していた診療所では、徐々に「生活習慣病管理料(Ⅰ)」「生活習慣病管理料(Ⅱ)」への移行が進んでいると思います。 今回の改定については、減収になる診療所もあるため、各方面でハレーションを起こしているようです。*1
一方で、「診察もせずに『管理料』請求」しているという新聞記事も出ています。*2 「診療報酬明細」を受け取っても、「これは何のための料金?」といちいち質問する患者さんはほぼいないでしょう。それをいいことに、「指導もせずに、管理料を取っている」*2医師がいると報じられています。
「管理料」は、生活習慣病を悪化させないために、医師が患者さんと一緒に生活習慣を見直すための「治療計画を策定し、当該治療計画に基づき、服薬、運動、休養、栄養、喫煙、家庭での体重や血圧の測定、飲酒及びその他療養を行うに当たっての問題点等の生活習慣に関する総合的な治療管理を行った場合」に、「服薬、運動、休養、栄養、喫煙及び飲酒等の生活習慣に関する総合的な治療管理を行う旨、患者に対して療養計画書により丁寧に説明を行い、患者の同意を得るとともに、当該計画書に患者の署名を受けた場合」に初めて算定できるものです。*3
実際、「え? そんな説明あったっけ?」と思う患者さんが少なくないことも確かです。
それは、次のようなアンケート結果からも垣間見れます。
出典:厚生労働省「中央社会保険医療協議会 総会(第563回)議事次第_外来(その3)」*4
つまり、特定疾患管理料を算定しているにもかかわらず、患者さんから「この先生は、私のかかりつけ医である」と認められていない診療所が少なくないということです。
加えて、「特定疾患療養管理料」が加算できる理由として、「治療計画に基づき、服薬、運動、栄養等の療養上の管理を行った場合の評価」となっていますが、これは「生活習慣病管理料」と何か違いがあるのか、二重評価になるのではないか、という指摘もありました。
今回の改定、「特定疾患療養管理料」から削除されることになった「高血圧、糖尿病、脂質異常症」は、「特定疾患療養管理料」の算定回数のうち全体の97・8%占めることも、厚労省の協議会では指摘されていました。*4 (P105)
こうした背景から、生活習慣病をめぐる診療報酬改定がなされたと考えられます。
診療の実態を踏まえた生活習慣病の評価に
厚生労働省が先ほどの棒グラフを示してまで、「特定疾患療養管理料」から3つの生活習慣病を削除したかったのは、「かかりつけ医機能」を向上させたいという意向があるのではないかと考えられます。と考えれば、「かかりつけ医機能」をきちんと果たしていれば、減収におびえることもないということです。
実際、「これまでの「生活習慣病管理料」を「生活習慣病管理料(Ⅰ)」に変更し、新たに「生活習慣病管理料(Ⅱ)」を分類したわけですが、注射や検査が包括されている(Ⅰ)については保険点数がそれぞれ40点ずつ引き上げられ、「脂質異常症を主病とする場合610点」「高血圧を主病とする場合660点」「糖尿病を主病とする場合760点」となりました。
一方、注射や検査は包括されず、出来高で算定する(Ⅱ)については333点で、「特定疾患管理料」の225点から108点加算されています。ただし月1回までの算定となっており、かつ(Ⅰ)を算定した日に属する月から6カ月間は算定できません。*5
つまり、病状が安定している患者さんには、「少なくとも1月に1回以上の総合的な治療管理を行う要件を廃止」しているわけで、患者さん側にとってはありがたい改定ともいえるのではないでしょうか。
全身病ともいえる生活習慣病は、ひとつの症状だけを見ていてもダメなことは周知で、厚労省も「歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士等の多職種と連携することを望ましい要件」としています。
では診療報酬改定後、どのように患者さんと対応していけば減収にならずにすむか、次回以降、考えていきます。
(文責:ブランディングエディター 内田朋恵)
参考文献
*1 全国保険医団体連合会では、「【2024年診療報酬改定】特定疾患療養管理料『廃止』の衝撃」という連載もある。
*2 「医療の値段」第3部①「明細書を見よう」(東京新聞WEB 2024年5月28日)
*3 2024年度診療報酬「個別改定項目」P361「【Ⅱ-5 外来医療の機能分化・強化等-①】① 生活習慣病に係る医学管理料の見直し」より。