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開業ドクターから学ぼう開業ケーススタディ
開業後の診療所経営について具体的ケースを検証し
経営改善につながる対策を『処方箋』として解説します。
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医療法人の活用による税務経営戦略
第10回では、経営戦略として医療法人を活用したケースをご紹介します。1日100人を超える日もあるほど地域で支持されているJクリニックですが、それだけの人数を診ながら日々のクリニック経営を行うためには、業務を担当する家族の存在が大きいのが現状です。しかし、そこには問題があったようです。
エピソード1 | 法人化して税金負担は軽くなる?-内科クリニック紹介 |
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エピソード2 | 新制度の医療法人は不利?-問題点に対する処方箋 |
法人化して税金負担は軽くなる?-内科クリニック紹介
地域に指示され繁盛するクリニックだが問題は税制面。経費の使い方に割り切れない思いが。
内科クリニックのケース
Jクリニックの概要
項目 | 内容 |
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標榜科目 | 内科・小児科(小児科専門医) |
院長 | 50歳 |
開設日 | 平成13年 |
所在地 | 千葉県西部 |
クリニックの概要 | 一日患者数100人 |
交通アクセス | JR線駅徒歩15分商業地域 |
スタッフ | 非常勤含め10名 |
経営形態 | 個人 |
Jクリニックの環境等
Jクリニックは開業から地道に患者数を増やしており、今では地域にもしっかりと認知され支持される医療機関となっています。患者数も多く繁忙期には1日100人を遙かにオーバーする日もあるほどなので、曜日・時間帯により二診体制としており、地元医大の医局から小児科医師を派遣してもらっています。ただし昨今の小児科医不足の影響で、確保は年々厳しくなっているというのが現実でもあります。
院長は診療の傍ら地元医師会の役員として地域の健康維持や行政との調整役もこなしており、かなり多忙な毎日を送っています。それをフォローしているのが奥様で、事務長として人事や経理・財務、院内の営繕などの業務はもちろん、患者さんや業者との対外的な折衝ごともこなし、ほぼ診療面以外のすべてに携わっているといってもよい状況です。
これまた多忙な奥様の補佐として、大学生の長女が週に数日クリニックで経理実務や雑務をこなしており、また県内の医学部4年に在籍中の長男も、診療の補助で週に1回程度勤務しています。 患者からの評価も高く繁盛しているJクリニックでしたが、問題は税金面にありました。数年前税務調査が入り、奥さんの専従者給与が過大であるとして否認、さらに派遣元の医局の先生や医師会の関係者などとの交際費などを50%否認されてしまいました。院長・奥さんが日常的に業務で使用している自動車の関連費用も一律50%アウトとなり、税務調査以後、かなり経費の使い方を厳しくしていますが、割り切れない思いが強いのが正直なところでした。
また長男長女の業務に対する給与の問題もあります。常勤ではないものの、実務をきちんと担当し勤務していることに対する給与を支給してあげたいところですが、個人事業では同一生計の親族には給与を出せないとのこと、専従者給与とするのも学生ということでやはり難しいようです。
ここで以前から厚生年金などの問題で不利だと聞かされていた医療法人について、医師会の中には法人化して医院の税金問題がかなり軽くなったと話す先生もおり、どのように考えてよいのか判断がつかずにいましたが、近年医療法人制度が改正されて解散の場合には財産が国のものになってしまうと聞くに至り、医療法人は自院には縁遠いものだと諦めていたのです。
そのようなある日、たまたま目にしたダイレクトメールに「新しい医療法人が不利だと誤解していませんか?」との記載が・・。会計事務所主催の医療法人セミナーの案内でしたが、その謳い文句に心動かされた院長は土曜日午後のセミナーに参加しました。そしてそこで目からウロコの話を聞き、早速個別相談に進んだ後に医療法人の設立を決意したのでした。
総括
果たして、どのような点が院長の決意に繋がったのでしょうか。
(文責:税理士法人アフェックス 旧 税理士法人町山合同会計)