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開業ドクターから学ぼう開業ケーススタディ
開業後の診療所経営について具体的ケースを検証し
経営改善につながる対策を『処方箋』として解説します。
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医師・スタッフの待遇改善(患者満足度調査)による経営改善
「患者満足度調査」の実施結果と対策とは?-問題点に対する処方箋
初心に立ち返る大切さ。 患者側から選ばれるクリニックになるために。
問題点に対する処方箋
1.患者満足度調査の実施内容
自院担当のY氏同席のもとで紹介を受けた業者と入念な打合せが始まり、次の手順に沿って実施することになりました。
- 職員への説明内容と協力要請
目的は、患者さんに安心・快適な医療を提供する診療所づくりのためであること 「患者満足度調査」は、患者さんの声に耳を傾ける手段であり、決して職員の"粗探し"ではないこと 設問作成への協力 - アンケート用紙の配布・回収期間は1か月間とする
- 待合室に「実施目的」、「協力依頼」、「結果と対応内容の院内掲示」を織り込んだ患者さん向けポスターを掲示する
- 実施機関は専門業者とする
2. 設問と結果
職員の声を取り入れての設問は、大きく分けると
- 当院を選んだ理由
- 職員の対応
- 医師の対応
- 院内・機器の設備
- 待ち時間(来院〜診察、診察終了〜会計)
- 院内清掃
の6項目になり、判定方法は「非常に満足」「満足」「普通」「不満足」「非常に不満足」の5段階としました。 回答数210の集計結果は、アンケートを締め切った約1ヵ月後に報告されました。 結果としては、「非常に満足」と「満足」を合算した「満足」の総合評価は91%に上りました。他項目も同様の評定をした結果、「待ち時間」、「設備関係」等は高い評価を得ていたのですが、中で唯一「職員の対応」の低調さが気になりました。 またコメント欄には職員に対する感謝の言葉と共に、率直な意見がいくつか記されていました。
- 皆さんが笑顔だともっと良いと思います
- ご親切に待合席まで来ていただくのですが、私のことが他の人に聞こえてしまって・・・
- 後ろを向いたまま「お大事に」と言われても・・・
思い起こせば、職員に入れ替わりがあったのにも係らず、開業時以降に接遇研修は行なわれていません。院長は、職員にアンケート結果の全てを説明し自身を含めて初心に立ち返ることの必要性を説き、申し出たY氏をトレーナー役として全員参加で研修を行ないました。 その後、待合室の一角に「アンケートご協力の御礼」と共に「結果と対応策」が掲示されました。多くの患者さんが立ち止まっています。「ご説明はゆっくりお話するように努めます(院長)」を読んだのでしょうか、にこやかに帰宅する患者さんも見受けられます。
3. 実施の効果
笑顔を意識する職員は患者さんから好評です。その後、徐々にではあるものの新患が増え40人を超える日も少なくありません。要因は職員の接遇改善はもとより、診療所が行なった一連の行動を患者さんが評価したものといえます。その評価が、「当院を選んだ理由」のトップにランクされた「紹介されて」に繋がった結果といえます。
総括
日々、診療に追われる中で診療側がマイナス要因を捉えることは極めて困難なこととであり、その対策として多くの医療機関では院内定期ミーテングが行なわれてそれなりに効果を発揮しています。本事例の「患者満足度調査」は、患者さんの声を直接聞きだす手法であり極めて有効なものといえます。質問の設定や依頼・回収の方法を工夫することにより、患者さんの視点から読み取る課題と対策が浮き彫りになります。その後の対応がより重要ではあるものの、増患対策を図る上で検討に値する手法といえるでしょう。
(文責:税理士法人アフェックス 旧 税理士法人町山合同会計)