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開業ドクターから学ぼう開業ケーススタディ
開業後の診療所経営について具体的ケースを検証し
経営改善につながる対策を『処方箋』として解説します。
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院内環境の整備と標榜科目の変更
第3回目では、近隣に同じ科目を標榜するクリニックがオープンしたことで直面した問題に、思い切った方向転換で乗り切ったクリニックをご紹介します。
自院改革のヒントは、後輩ドクターの開業内覧会にあったようです。
エピソード1 | 近くに競合クリニックが開院。その影響は-内科・小児科ケース紹介 |
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エピソード2 | 患者は”設備の整った専門医”を選ぶ?-問題点に対する処方箋 |
危惧していた小児患者数の減少…。改革のヒントは?
内科・小児科クリニックのケース
Cクリニックの概要
項目 | 内容 |
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標榜科目 | 内科、小児科 |
院長 | 男性 50歳 |
開設日 | 平成17年4月 |
所在地 | 東京都郊外 |
クリニックの概要 | テナントビル1階(40坪) 診察室2、処置室1、エックス線室 |
専用駐車場 | 2台 |
交通アクセス | 私鉄の最寄り駅 徒歩10分 |
スタッフ | 看護師1名、受付事務員4名(パート職員含む) |
経営形態 | 個人 |
Cクリニックの環境等
東京都郊外で私鉄の最寄り駅から徒歩10分にあるCクリニック。近隣には古くから住居を構えているご高齢の方々に加え、都心まで30分という便利さから比較的若いサラリーマン世帯も多く人口密度は高い地域といえるでしょう。 この地は従前から路線バスが整備されており多くの人は移動手段に路線バスを利用していますが、Cクリニックは小児科も標榜していることから専用駐車場を2台分確保しています。
さて、テナント物件についてですが、院長が探し当てた物件はいわゆる「事務所仕様」に分類されるものでした。立地条件、内部の状況などは満足いくもので院長は契約の意向を固めていましたが、念のため友人から紹介を受けた設計・施工業者に診療所として成立する物件であるか否かの判断を依頼しました。業者のチェック結果は面積、天井の高さ、電気容量など構造上に問題はなく、エアコンとお手洗い以外は現状のまま使用できるというものであり、開業資金を抑えたかった院長には好都合の物件でありさっそく賃貸契約の手続に入りました。
また、診療所のレイアウトを決めるにあたり「診療側・患者側の動線」、「導入する医療機器の設置場所とサイズ」、また、「オンライン関係」などに対する留意が必要となります。そこで院長は設計・施工業者に加え経験豊富な医療コンサルタントと医療機器に精通している業者を交え検討を行いました。着工後1ヵ月強、Cクリニックは「キッズコーナー」も設けられた清潔感のある診療所として完成いたしました。
スタッフについてはクリニック勤務経験者を2名採用でき、接遇についても特段の問題はなかったようです。
宣伝広告の面では医院入口の看板も程良く目立ってわかり易く、また、路線バスが充実していることからバス車内に広告を掲載しています。
ホームページも開設し医院の雰囲気や装備している医療機器の写真を掲載しておりこの面でも不足感はなさそうです。
経営状況
月間数値 | 実績 | 事業計画 |
---|---|---|
一日あたり患者数 | 31人 | 50人 |
診療単価 | 4,100円 | 4,000円 |
医業収入 | 280万 | 440万円 |
薬品費等 | 20万円 | 26万円 |
人件費 | 106万円 | 100万円 |
家賃・リース料 | 45万円 | 45万円 |
その他経費 | 30万円 | 35万円 |
差引利益 | 79万円 | 234万円 |
借入返済 | 22万円 | 22万円 |
差引収支 | 57万円 | 212万円 |
実績は開業より18ヶ月経過時点の月額事業計画は開業前の18ヶ月後の予測数値
開業当初の患者数は1日あたり10名前後、以降平常期で40名を超える時期もありましたが、ここ数年は30 名前後に減少しています。また、ここ数年の患者さん動態を年齢層で見ると成人には大きな減少は見られないものの小児患者の減少が顕著です。
小児患者数は受療率の高い乳幼児を中心に年次の人口動態で影響を受けますが、Cクリニックにおけるこの減少の要因は人口動態によるものではなく一昨年、近隣に小児科「Xこどもクリニック」が開設されたことが大きな要因のようでした。
小児専門クリニックのオープンを知ってから感じていた危惧が現実となった結果でもありましたが、その状況への対策を決めかねていた院長に、後輩Dr.から新規開業の挨拶状が届き、内覧会に出向くことにしたのです。
開業場所は都内私鉄駅近くのテナントビル。待合室、診察室、処置室などを見て回り、診療側はもとより患者さん側の流れもスムーズなレイアウトであることに気づかされました。
木目調で統一された各ドアは待合室のイエロー系パステルカラーとマッチしています。医院の顔でもある受付は開放感を感じさせるオープンカウンターでその高さも普通のものとやや低いものとの二段になっています。
“ここには気を使いました“と後輩に案内されたお手洗いは、間口が広く個室もゆとりを感じさせる広さが確保されています。他にも手すり、小棚、BGMなどまるでホテルと勘違いしそうな造りです。
お祝いと自身の経験を伝えて帰路についた院長は、自院改革のヒントを得てその後の思い切った方向転換につなげることになります。
総括
院長がどのような戦略転換を行ったのか、そしてその結果がどのように現れてきたか、次回詳しくご紹介いたします。
(文責:税理士法人町山合同会計)