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クリニック経営を左右する失敗しないスタッフ採用のコツ
人材不足と言われる中、よいスタッフ採用するには?
最高の診療ができる環境にするための、人材確保のコツとは。
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看護師にどこまで任せるか
先生の持てる力を診療面で最大に発揮するためには、看護師を活用することも重要な戦略です。 そのためにも、診療に集中できる環境を作るうえで、あらかじめ看護師に任せる範囲を決めることは必要です。
クリニックなら、准看護師で十分?
「看護師」と「准看護師」の違いは、勤務医時代にはあまり気にしなかったのではないでしょうか。
国家資格である看護師であれば、医師が一つ一つ指示を出さなくても、カルテを見て看護行為をしてくれます。一方、都道府県知事の試験に合格すればいい准看護師は、医師か看護師の指示のもと、看護行為を行わなければなりません。 正直、クリニック(診療所)では、給料が高い正看護師を雇う必要はありません。
しかし、今後、クリニックとして訪問看護や終末期医療、糖尿病などの特定分野に特化した医療行為をすることも視野に入れているならば、初めから正看護師を雇い、クリニックの運営にも積極的に参加してもらうという方法もあり得るでしょう。 開業医は経営者でもあるわけですから、開業時のリスクを考えれば、准看護師で十分ですが、経営が軌道に乗り、3年後、5年後を視野に入れた経営計画を立てたとき、必要と思われるなら、そのときは正看護師を雇うことも考えてみてもいいのではないでしょうか。
ちなみに、准看護師資格制度については、それぞれの団体で違う意見があり、今後の国の動向が注目されています。実際、日本看護協会では、准看護師の廃止、正看護師への一本化を目指していますが、日本医師会では、准看護師制度の保持を呼びかけています。
インフルエンザの予防接種は誰がやる?
このように、看護師の採用一つとっても悩みどころはたくさんあります。
たとえば、看護師にどこまで仕事を任せるか、も経営上、悩む点です。
そこで、開業医なら多くが行うインフルエンザの予防接種を例にして考えてみましょう。
現在の医師法では、インフルエンザの予防接種は医師の指示があれば、看護師(准看護師)でも注射をすることができます。
クリニックでは、インフルエンザだけでなく、さまざまな予防接種をすることになると思いますから、注射は看護師に任せるかどうか、初めに決めておくといいでしょう。
なぜなら、それにより採用する看護師のレベルも変ってくるからです。
例えば、注射や採血はある程度は看護師に任せたいと思っていたにもかかわらず、人件費を抑えることばかりを考えて採用した結果、そういった経験があまりない准看護師を採用してしまったら、予定していた診療スタイルを変更しなければなりません。その結果、先生のストレスが増し、仕事のパフォーマンスが落ちてしまったら、それは採用の失敗といえるでしょう。
もし、経験豊富で優秀な看護師を雇いたい、でもコストも抑えたいと考えるなら、短時間勤務で働きたい、子育て中や介護中の正看護師を狙うのがお勧めです。
予防接種などは、看護師の勤務時間に合わせて、予約制にすればいいですし、そういう正看護師が2~3人採用できれば、准看護師を一人正社員として採用するよりも、きっと戦力になるでしょう。
このように、ドクターの診療スタイルや診療科目によっては、クリニックであっても正看護師を雇う方が利益を上げられるケースもあります。
目先の利益を追求するあまり、スタッフの質を下げることがないよう、かけるところにはしっかりお金をかける。スタッフ採用は、経営者とドクターの二つの目で判断することが必要です。
(エディター・キャリアコンサルタント:内田朋恵)