2025年4月からはじまる「かかりつけ医機能報告制度」にどう対応する?
(2025年1月)
昨年10月、「かかりつけ医機能制度に係る第1回自治体向け説明会」*1 が開催されました。厚労省は、今年4月からの制度施行に向け、着々と準備を進めているようです。
「かかりつけ医機能報告制度」とは、簡単に言えば、自診療所が慢性疾患の高齢者や継続的な治療が必要な地域住民を支えるために有しているかかりつけ医機能を、定期的に都道府県知事に対して報告し、都道府県知事は、どのクリニックがどのようなかかりつけ医機能を有しているかを、都道府県のホームページなどで公表する制度です。
年に1度、自治体からの「かかりつけ医機能」についてのアンケートに答えなければなりません。また、その際、「かかりつけ医」に関する研修を修了あるいは総合診療専門医がいるかどうか、17の診療領域のどの領域が診療可能かどうかについて、明確にしなければなりません。*2
厚労省がここまで強硬に「かかりつけ医機能」が発揮されるような制度整備を進める背景には、2040年問題(85歳以上人口を中心とした高齢社会かつ生産年齢人口が減少する社会)があります。生産年齢人口が減少するということは、もちろん医療従事者、介護福祉従事者の減少と人材不足が深刻化します。加えて、医師、特に開業医の高齢化が進むことが見込まれます。
こうした社会状況を見据えての制度改革であり、厚労省は開業医には地域医療のゲートキーパーとしての役割を求め、プライマリケアを充実させ、地域の中核病院が効率よく機能する社会を作りたいのだと思います。
さらには、かかりつけ医機能を充実させ、予防医学の徹底と、生活習慣病などの慢性疾患の悪化を防ぐねらいがあるのでしょう。
実際、多くの働く人たちが、健康診断で受診勧奨判定が出ているにもかかわらず、医療機関を受診していない状況にあることがデータから明らかになりました。
昨年12月16日に健康保険組合が発表した「業態別にみた被保険者の健康状態に関する調査」*3 によると、健康診断等で「受診勧奨判定者の状況」となりながら、実際に医療機関を受診していない人が相当数いることがわかります。
たとえば、「血圧」の「受診勧奨判定値該当者」は20.3%であるにもかかわらず(*3 35頁 )、実際に「血圧を下げる薬を服用している者」は18.0%にとどまっています(*3 50頁)。
「血糖」が高い「受診勧奨判定該当者」は5.9%(*3 41頁)ですが、「インスリン注射や血糖を下げる薬を服用している者」は5.5%(*3 56頁)です。
受診控えの理由は様々でしょうが、かかりつけ医がない、どの病院にかかればいいかわからない、という人たちは少なくないでしょう。
かかりつけ医機能の充実により、総合診療医がいる病院が増えることで、気軽に病院を受診できるような状況を作っていけば、それが受診控えをなくす最初の一歩になるでしょう。
開業医として「かかりつけ医」になるか、「専門医」となるか、今年はその結論を出すべき年になるのではないでしょうか。
(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)
*1「かかりつけ医機能報告制度に係る第1回自治体向け説明会」(令和6年10月28日、厚生労働省医政局総務課) (最終閲覧日:2024年12月22日)
*2「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に向けた議論の整理」(令和6年7月 31日、かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会) (最終閲覧日2024年12月22日)
*3「業態別にみた被保険者の健康状態に関する調査」(令和6年11月、健康保険組合連合会 政策部調査分析グループ) (最終閲覧日2024年12月22日)