日本感染症学会などが呼びかけ。高齢者の新型コロナワクチン接種
(2024年11月)
10月から高齢者などを対象にした新型コロナワクチンの定期接種が始まりました。
接種可能なワクチンは5種類となりますが、そのうちの新たに接種可能になった「レプリコンワクチン」に対して、さまざまな言説が飛び交っています。
8月、一般社団法人・日本看護倫理学会が「新型コロナウイルス感染症予防接種に導入されるレプリコンワクチンへの懸念 自分と周りの人々のために」という緊急声明*1 を表明しました。
これが契機となって、SNS上では「レプリコンワクチンは危険」という言説が広がり、このワクチンを接種した人の入店を拒否する飲食店まで現れました。
こうした事態を受け、10月8日、Meiji Seikaファルマはメディアセミナーを開き、ワクチンの安全性をアピールしたのです。*2
同日開いた「新型コロナウイルスの変異型対応ワクチン「コスタイベ筋注用」について」の記者会見のなかでは、このワクチンを導入した医療機関に対する誹謗中傷や脅迫されていることに触れ、同社は批判を繰り返す反ワクチン団体などを名誉棄損で提訴する方針も明らかにしました。*3
厚生労働省もレプリコンワクチンの安全性を強く主張し、「新型コロナワクチンQ&A」のサイト*4 で、「現在、色々な国で、新型コロナワクチンのレプリコンワクチンを含め、様々な疾患を対象としたレプリコンワクチンの開発が進められていますが、これまでに、レプリコンワクチンを受けた方から他の方にワクチンの成分が伝播するという科学的知見はありません」と説明しています。
こうした状況のなか、10月21日、日本感染症学会は自身のHPで、「2024年度の新型コロナワクチン接種に関する見解」*5 を発表しました。
このような見解が発表された背景には、デマやいろいろな情報が飛び交うなかで、高齢者が新型コロナワクチンの接種を躊躇している、あるいは様子見をしている、といった事情があるのではないでしょうか。
近頃はコロナワクチンの接種を実施している医療機関のホームページでも、接種を呼び掛けているサイトが見られるようになりました。
東京都のデータによると、今夏の流行時の入院者数のピークは、昨冬よりも高くなっています。*6
感染症学会の見解でも「今夏の第 11 波では、⾼齢者を中⼼に⼊院患者が増加し、ウイルス性肺炎による重症者も再びみられました」、さらに「2023 年度秋開始接種として XBB.1.5対応ワクチンの特例臨時接種が実施されましたが、接種率は全体で 22.7%、⾼齢者でも 53.7%にとどまり、⾼齢者の免疫が⼗分でないことが考えられます」と指摘しています。
実際、5類移行後から2024年4月までの「1年間のわが国のCOVID -19による死亡者数は29, 336人」とも報告されており、この数はなんと、5類移⾏までの3年4か⽉間のCOVID-19の死亡者数(74,096⼈)の「40%にあたる数の死亡者が5類移⾏後の1年間にみられています」という事実も報告されています。
高齢者にとってのCOVID-19の重症化・死亡リスクはインフルエンザ以上であることは確かです。
迷っている高齢患者さんとはきちんとコミュニケーションをとり、患者さんの不安を取り除き、ワクチン接種に導くことも大切ではないでしょうか。
(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)
*1「新型コロナウイルス感染症予防接種に導入されるレプリコンワクチンへの懸念 自分と周りの人々のために」一般社団法人日本看護倫理学会(2024年8月7日)
*2「入店拒否に嫌がらせ電話 混乱広がる「レプリコンワクチン」を専門家はどうみる?」毎日新聞「医療プレミア」(2024年10月19日)
*3「明治HD系、反ワクチン団体を提訴へ 名誉毀損で」日本経済新聞(2024年10月8日)
*5「2024 年度の新型コロナワクチン定期接種に関する⾒解」2024年10月17日付
*6「東京都新型コロナウイルス感染症情報」新型コロナ情報第18号2024年(令和6 年) 8月2日発行
(最終閲覧日はすべて2024年10月27日)