国の新たな地域医療確保に向けた試みに、開業医としてどうすべきか
(2024年9月)
団塊の世代がすべて75歳以上になる、いわゆる「2025年問題」はもう待ったなしの状態です。
加えて、コロナ禍を経て日本の少子化は止まるところ知らず、人口の東京圏集中はますます加速しています。
そんな中で発生した能登半島地震は、過疎が進んだ地域で災害が発生すると、簡単に地域医療が崩壊してしまう現実を白日の下にしたのです。
こうした状況を想定して厚生労働省は、2025年に向け「地域医療構想」について検討を重ねてきました。
ところが高齢化少子化の一層の加速を受け、「85歳以上人口の増大や現役世代の減少に対応できるよう、病院のみならず、かかりつけ医機能や在宅医療、医療・介護連携等を含め」た新たな地域の医療提供体制構想が必要になってきたのです。
そこで2024年3月から、現行の「地域医療構想」に引き続き、「新たな地域医療構想等に関する検討会」を開催することになりました。*1
これまでの地域医療構想は、「中長期的な人口構造や地域の医療ニーズの質・量の変化を見据え、医療機関の機能分化・連携を進め、良質かつ適切な医療を効率的に提供できる体制の確保を目的とするもの」で、主に地域の「入院医療改革」を主眼とした2次医療圏ベースでの議論でした。
一方、新たな地域医療構想では、「入院にとどまらず、外来、在宅、医療・介護連携、人材確保」までも網羅した、2040年頃の医療提供体制のビジョンを検討していきます。*2 (P154~)
8月までにすでに7回の検討会が開かれ、特に第6回(6月21日開催)では、これまでの議論を踏まえた論点整理が行われ、検討の方向性が示されました。*3 (P32~P35)
今後はかかりつけ医機能の充実と地域包括ケアシステムの中でのかかりつけ医機能、その対象者、医療機関の連携・ネットワーク化の検討、そしてかかりつけ医機能の確保に向けた医師の教育・研修を充実させることなどが求められています。
加えて、医師の偏在対策の観点から、医師の少ない地域での医師確保の取組やオンライン診療の活用、タスクシフト、タスクシェアの推進も図られるようです。*2 (P162)
特に2040年頃を見据えると、地域によっては外来医療の需要は減少か横ばいとなる一方で、在宅医療の需要は増加が見込まれる模様です。
そうした状況下で、「かかりつけ医機能を担う医療機関」と「専門外来中心の医療機関」の連携をどうしていくか、必要な病床数の確保はどうするかなど、その地域で必要な医療機能の確保方法を考えていかなければなりません。*3 (P32)
2040年は15年後の話です。しかし、これから開業を考えている人にとっては、そう遠い話ではありません。
その時点を見据えて、専門外来中心で行くのか、標榜科をどうするか、かかりつけ医機能や在宅医療を準備するか、など、新たな地域医療構想等に関する検討会の議論の行方を注視して、検討していくべきでしょう。
(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)
*1「新たな地域医療構想等に関する検討会 開催要綱」(第1回新たな地域医療構想等に関する検討会 令和6年3月29日)
*2「新たな地域医療構想に関する検討の進め方について」(第1回新たな地域医療構想等に関する検討会 令和6年3月29日)資料2
*3「新たな地域医療構想に関する論点について」(第6回新たな地域医療構想等に関する検討会 令和6年6月21日)資料1