診療報酬改定を受け、物価高に負けない賃上げは可能か?
(2024年5月)
6月からの診療報酬改定に向け、4月12日、厚労省から「2024年度の診療報酬改定の疑義解釈」の資料(その2)*1 が取りまとめられ、地方厚生(支)局医療課に送付されました。
また、厚生労働省のホームページには「令和6年度診療報酬改定について」というページ*2 が設けられ、今回の改定の概要がまとめられています。
DX推進や生活習慣病対策など、かなり国の恣意的な加点が見え隠れする診療報酬改定だと思いますが、なかでも注目したいのが、新たに創設される「外来・在宅ベースアップ評価料等について」です。
厚労省は、「外来・在宅ベースアップ評価料等」の説明だけの特設ページ*3 を設けて、賃上げについての情報を詳細に掲載しています。
これを見るだけでも国の賃上げに対する本気度が見えるのではないでしょうか。
とはいえ、今回の賃上げは職種によってベースアップ率が違います。
病院、診療所、歯科診療所、訪問看護ステーションに勤務する看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種は+0.61%の改定となり、40歳未満の勤務医師・勤務歯科医師・薬局の勤務薬剤師、事務職員、歯科技工所等で従事する者事務職員は+0.28%程度分の改定となります。
また、賃上げの財源も異なり、0.61%分については「外来・在宅ベースアップ評価料」と「入院ベースアップ評価料」、さらには賃上げ促進税制による税額控除の対象になりますが、+0.28%程度分については、引き上げられる初診再診料や入院基本料などを財源として賃上げをすることとなります。
つまり、賃上げ財源が診療報酬改定により充当されるスタッフ(看護職)と、診療所の努力によって賃上げをするスタッフ(事務職)に二分されるということなのです。
また、ベースアップ目標の達成が令和6年度+2.5%、令和7年度+2.0%と規定されており、この目標数値の達成は「外来・在宅ベースアップ評価料」の算定要件となっています。
加えて、賃金引上げに係る計画書、賃金引上げの実施状況の報告書の提出(毎年)、抽出調査による報告が予定されています。
ここで気になるのが、この「外来・在宅ベースアップ評価料」が未来永劫、今後もあり続けるのかどうかという点です。社会保障財源の不足から、2年後、突然この診療報酬がなくなることも否定できません。それは賃上げ財源が消滅することを意味します。
たしかに賃上げは必要です。しかし、一般企業のように新しい商品やサービスを売ることで財源を得ることができない医療機関にあっては、創設された診療報酬がなくなっても、スタッフの給料を上げ続けられるような努力、生産性を上げて利益率をアップするたゆまぬ努力をしていくことが必要になってくるでしょう。
厚労省の特設ページには、今回の賃上げについての説明が「令和6年度診療報酬改定と賃上げについて~今考えていただきたいこと」という動画*4 でアップされています。
賃上げは6月からでも可能ですから、まずはこちらを参考に賃上げの可能性を探ってみてはいかがでしょうか。
(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)