4月から始まる時間外労働規制と医療従事者の賃上げに向けて準備しておくべきことは?
(2024年3月)
4月からの時間外労働の上限規制*1 が始まります。
これに合わせて作られたと思われる「まるっと減らそう!再配達」という政府広報CMをよく目にするようになりました。
コロナ禍を経て急拡大したECコマース(ネット通販)とドライバー不足が、物流業界だけでなく大きな社会問題になっているからです。
この時間外労働規制問題は医療業界も他人事ではありません。
医師もこの時間外労働の上限規制の適用者となっており、非常勤で働く医師にもこの規制が適用されるため、上限規制に触れずにアルバイトするためには注意が必要なのです。
もし非常勤の医師をお願いしているなら、常勤先の適用労働時間が何時間か、まずはそれを把握し、アルバイト先の勤務時間と合算して、上限規制に掛からないかを確認しておきましょう。
この規制に触れる場合には、非常勤医師を1人体制から2~3人体制にしなければならず、それにより人件費の負担が増えるかもしれません。
4月になる前に体制を整えられるよう、準備が求められます。
4月から変わる最大のイベントが2024年度の診療報酬改定です。
今回は医療、介護、障害福祉サービスのトリプル改定となり、この機会に制度間調整が行われる重要かつ大規模な改定となるため、何かと話題になっています。
また、本来なら診療報酬改定は4月1日から施行ですが、2024年度診療報酬改定より、薬価改定については「4月1日」に施行、薬価改定以外の改定事項については「6月1日」に施行することを事務局が提案し、了承されています。
今回、医療従事者の賃上げが争点になっていましたが、看護師などの医療関係職種の賃上げのために特例的な対応として+0.61%の改定、40歳未満の勤務医、勤務薬剤師、事務職員などには賃上げに資する対応として+0.28%の改定、さらに医療従事者の賃上げに必要な診療報酬を創設することとなりました。*2
また、令和6年度にベア+2.5%、令和7年度にベア+2.0%の実現に向けて、
① 医療機関等の過去の実績
② 今般の報酬改定による上乗せの活用
③ 賃上げ税制の活用
を組み合わせることで、賃上げ達成を目指すことになります。
そして、確実に賃上げしていくために、賃上げの状況を「賃金引上げに係る計画書」「賃金引上げの実地状況の報告書」にして、毎年、地方厚生(支)局に提出することになる予定です。
創設される診療報酬は、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)、(Ⅱ)」、「入院ベースアップ評価料」です。また、初診料・再診料や入院基本料等についても、職員の賃上げを実施することを踏まえた引上げがされます。
さらに、今回創設される診療報酬(既存の看護職員処遇改善評価料を含む)による賃上げについては、賃上げ促進税制の税額控除の対象になります。
「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅱ)」は、「外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)」だけでは賃上げが不十分な診療所(無床)でのみ、算定ができるものです。保険点数については、*2 を参照してください。
今回の改定により、患者さんの負担が増えることが明白です。コロナ禍以降、外来患者数は減っており、2023年11月末の患者数は、コロナ禍前の2019年11月末と比べて、外来で6.3%減*3 で、コロナ禍前にまだ戻っていないことがわかります。
その中での患者負担増ですから、診療所側はさらに良い医療を提供し、ホスピタリティーを充実させ、患者さんの満足度を上げる努力が、より一層求められる時代になってきたようです。
(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)
*1「時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務」厚生労働省ホームページ
*2「令和6年度診療報酬改定と賃上げについて~今考えていただきたいこと(病院・医科診療所の場合~)令和6年2月15日 厚生労働省保険局医療課