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能登半島地震でも明らかになったマイナ保険証の問題点


 (2024年2月) 

元日に能登半島を襲った地震は、一か月経ってもまだ被害の全容がわからないと言われるほど、私たちに衝撃を与えました。
ここで問題になっているのが、高齢者と医療の問題です。
大きな被害を受けた珠洲市、輪島市、穴水町、能登町、七尾市、志賀町、羽咋市の923町丁のうち、49%の町丁で65歳以上人口の割合が5割を超えており、なかでも穴水町(76%)、珠洲市(75%)は7割を超える高齢化率です。*1 

生活習慣病を抱える高齢者にとって毎日飲んでいる薬が飲めなくなることは一大事です。しかし自宅が倒壊・損壊し、薬を持ち出せずに避難所に来た高齢者は多くいます。
こうした着の身着のままで逃げだした方たちに対して、河野太郎デジタル大臣は1月23日の記者会見で、「マイナンバーカードをお持ちのかたは、タンスに入れておくのではなく、現時点ではぜひ財布に入れて、避難する際などに一緒に避難していただければと思っている」*2 と発言し、批判が噴出しました。

河野大臣の発言を受け、全国保険医団体連合会のHPでは厚労省の「【能登半島地震】被災者は保険証や現金なくても 医療機関等を受診できます」*3 というポスターを再掲し、「【能登半島地震】災害時は「保険証」も「お薬手帳」も「マイナカード」もなくても大丈夫!」*4 と告知しています。
さらに、マイナカードで被害者状況を把握することを断念し、代わりにJR東日本の「Suica」を配布するというニュースも飛び込んできました。*5 

これほどマイナカード、マイナ保険証が普及していないにもかかわらず、1月19日に開催された「第174回社会保障審議会医療保険部会」では、マイナ保険証のさらなる利用促進についての方策が検討されました。*6 

マイナ保険証の利用率は相変わらず低迷しており、昨年12月の時点で4.29%。*7 
審議会では、「特に若年層で、マイナカードを持参・携行習慣がない」とし、窓口で「保険証はお持ちですか?」と聞くことも、マイナ保険証が普及しない一因であるとされています。

しかし、そもそもマイナカードの取得は任意であることの大前提が、この議論からは抜けています。にもかかわらず、厚労省はマイナ保険証の普及に躍起です。
普及のために、職域診療所に対する財政支援(医療情報化支援基金)を設け、①顔認証付きカードリーダーの導入、②資格確認端末の用意、③ネットワーク環境の整備、④レセプトコンピュータ、電子カルテシステム等の既存システムの改修のために、補助金を用意しました。

さらには、令和5年度補正予算として、「医療機関等におけるマイナ保険証利用促進のための支援(案)」217億円も用意しました。
これは、2024年1~11月の期間、マイナ保険証の利用率(初診・再診・調剤)が一定以上増加した医療機関に対して、増加率に応じて段階的に利用件数分の支援をするというものです。
たとえば、2023年10月よりも50%ポイント以上の利用率増加があった場合には、1件当たり120円が医療機関に支払われます。*8 

ただ、能登半島地震では電気も通信も全く使えず、通信は1月15日から復旧、電気に至っては1月中におおむね復旧見込み*9、という現実を見てしまうと、政府の旗振り通りに、マイナ保険証の利用を患者さんに進めていいものか。
一度立ち止まって考えてみることも必要なのではないでしょうか。

(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)


 *1 2020年国勢調査より。

 *2「河野デジタル相「マイナカードと一緒に避難して」発言…「停電ならただのカード」「まだ言ってる」SNSで批判殺到」FLASH編集部 2024年1月25日配信

 *3「能登半島地震」被災者の方へ(令和6年1月12日)厚生労働省 

 *4 全国保険医団体連合会HP 医療ニュース 

 *5「能登地震の被災者把握で「マイナカード」を断念、Suicaで代替--「リーダー用意できず」と河野大臣」CNETJapan 2024年1月26日配信

 *6「マイナ保険証の利用促進等について」令和6年1月19日第174回社会保障審議会医療保険部会 資料1 

 *7「マイナ保険証の利用率、8カ月連続低下 若年層ほど利用しない実態も」朝日新聞 2024年1月20日配信 

 *8「マイナ保険証の利用促進等について」令和6年1月19日第174回社会保障審議会医療保険部会 資料1 28P   

 *9「能登半島の停電、1月中のおおむね復旧の見通し…輪島・珠洲の一部沿岸では長期化」読売新聞オンライン 2024年1月23日配信

 

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