マイナ保険証、カルテ、処方箋・・・電子化はどこまで進むか?
(2022年12月)
「令和6(2024)年度秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナ保険証へ切り替える」という方針を唐突に発表した河野太郎デジタル大臣の10月13日の記者会見以来、テレビや新聞報道、SNS上では、これについての賛否両論が渦巻いています。
そもそもマイナンバーカードの交付率がやっと5割を超えた程度(10月18日現在)、マイナ保険証の普及率は2割程度、カードリーダーの医療機関の普及率は3割強(ともに9月時点)という中での突然の発表に対して、拙速な導入への反対意見の方が多くみられるようです。
とはいえ、来年4月からのマイナ保険証の実質義務化、さらにはオンライン資格確認等システムの導入に向け、医療機関としてはカードリーダー導入を進めなければなりません。
厚生労働省は「オンライン資格確認の導入で事務コストの削減とより良い医療の提供を~データヘルスの基盤として~」*1 というレジメをWEB上にアップし、医療機関、薬局への普及に努めています。
これに伴い、患者の負担増になっていると批判が出ていた「電子的保健医療情報活用加算」(オンライン資格確認システムを利用して患者情報を取得して診療した場合に算定できる)を廃止し、10月からはマイナ保険証を持っている人への点数を減らす「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」が新設されることになり*2 、厚労省はオンライン資格確認システムの導入への地ならしを着々と進めています。
オンライン資格確認システムが本格始動すれば、患者の同意があれば病院間で患者の医療情報が共有できるため、医療費の削減だけでなく、患者・医療機関双方に様々なメリットがあると想定されています。
ただ、それにはカルテの電子化は避けられず、マイナ保険証のカードリーダー導入と併せて、診療所には多額の費用がかかるため、高齢の開業医には大変厳しい状況になっているようです。
思い切って病院を畳む、という選択をする医師も少なからず現れるのではないでしょうか。
加えて、来年1月からは電子処方箋の運用も始まります。
厚生労働省では電子処方箋の専用サイト*3 を作って、診療所、薬局への普及を図っていますが、4月からすでに導入されているリフィル処方箋も、電子処方箋の解禁とともに一気に進むのではないかと考えられます。
リフィル処方箋を巡っては、処方箋原本は患者が保管しなければならないため、オンライン服薬指導を行う際、処方箋のやり取りが煩雑なるという問題が指摘されていました。
10月20日に開催された内閣府の規制改革推進会議医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ(WG)では、これに対しての厚労省の回答が示され*4 、「リフィル処方箋による調剤においては、患者の服薬状況、状態の変化、副作用の発現等を丁寧に確認し、必要に応じて受診勧奨を行わなければならないことを踏まえつつ、患者またはその家族等の意向を確認し、薬局側で処方箋原本を保管しておき、同じ薬局で2回目以降も調剤およびオンライン服薬指導を行うことは可能」としました。
こうした問題も、電子処方箋が導入されれば解決されます。
さらには電子処方箋の導入を見越して、ネット通販サイト・アマゾンが2023年に日本で処方薬のネット販売を検討していると報じられ、日本の薬局に激震が走りました。*5
アマゾン薬局については、アマゾンからの公式発表がまだ何もないため詳細は不明ですが、アメリカでは2020年からオンライン薬局「Amazon Pharmacy(アマゾン・ファーマシー)」による処方箋薬の販売が開始されています。
いずれにしても、今後の動きには注視していきたいものです。
マイナ保険証導入の行方はまだ不確定ですが、少なくとも医療をめぐる電子化はますます進んでいくのは間違いないでしょう。
(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)
*1 「オンライン資格確認の導入で事務コストの削減とより良い医療の提供を~データヘルスの基盤として~」厚生労働省保健局 令和4年11月
*2 中央社会保険医療協議会 総会(第527回)令和4年8月10日 資料:総12-2
*3 電子処方箋専用サイト
*4 第1回 医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ 議事次第(令和4年10月20日)提案内容に関する所管省庁の回答11ページ「オンライン服薬指導の規制緩和について」
*5 アマゾン薬局上陸、"街の薬剤師は不要"になるか、日本で処方薬のネット販売への参入を検討(東洋経済オンライン2022年11月25日配信)