高齢者のポリファーマシー対策は病院と薬局の連携が大切
(2022年8月)
6月23日、厚生労働省のHPに「ポリファーマシーに対する啓発資材の活用について」*1 という記事が掲載されました。
これは、令和2(2020)年3月24日に掲載した啓発資材*2 の動画版ができたというお知らせなのですが、実は「ポリファーマシー」についての告知は令和3(2021)年3月31日にも出ています。
この時の記事は、「「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」についての通知発出について」*3 でした。
ここから見えてくるのは、高齢者のポリファーマシーは、厚生労働省が何度通知を出してもなかなか改善されない問題だということです。
腰や膝が痛いから整形外科、血圧が高いから内科、耳がよく聞こえないから耳鼻科、入れ歯の調子が悪いから歯科、というように、高齢者は同時に複数の病院・診療科を受診することが多々あります。
その際、薬局だけでも「かかつけ薬局」を利用してくれれば、薬剤師がトータルに処方薬の状況をチェックできるのですが、門前薬局を利用する人が多いため、トータルで薬の管理ができていないのが現状です。
ポリファーマシー対策は、一人の医師や一人の薬剤師が頑張ったところで、うまくいくものではありませんが、せめて地域間の診療所、薬局で連携していくことは重要です。
しかし連携するよりも問題なのが、薬局から疑義紹介を受けたときの医師側の対応だと言われています。
なぜなら、疑義紹介を受けた医師側は、どうしても「薬剤師が何を偉そうに」と感じてしまうことが多いから、というのがその理由のようです。
日本化学療法学会は、2022年4月から「外来抗感染症薬認定薬剤師」制度の運用をスタートさせましたが、専門知識を持つ認定薬剤師を活用できるかどうかは、まず医師側、薬剤師側、双方の意識改革が必要であると指摘されています。
意識改革については、今年6月3~5日、岐阜県岐阜市で行われた第70回日本化学療法学会総会で、「外来で処方された抗感染症薬を、薬局薬剤師が疑義照会で『本当に必要ですか』と言えればいいが、ハードルは高い」と、松本哲也理事長も指摘しています。*4
認証薬剤師であってもこうした危惧がされているのですから、高齢者のポリファーマシー対策で、一般の薬局薬剤師が医師に疑義紹介をして、さらには他剤の提案までできるかどうか、難しいというのが本当のところでしょう。
厚生労働省は、令和3年3月31日の「「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」について」*5 という通知で、かなり詳細なポリファーマシー対策をまとめています。
この通知は院内薬剤師向けですが、院内薬剤師であってもできない理由がたくさん羅列されてしまう現状をみると、はたして薬局薬剤師に高齢者ポリファーマシー対策が推進できるかどうか……。
とはいえ、高齢者ポリファーマシー対策は患者さんのためにも進めていかなければならないものです。
まずは医師側の意識改革を早急に進める必要があるのではないでしょうか。
(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)
*1「ポリファーマシーに対する啓発資材の活用について」令和4年6月23日(木)
*2「ポリファーマシーに対する啓発資材の活用について」令和2年3月24日(木)
*3「「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」についての通知発出について」令和3年3月31日(水)
*4「外来感染生薬で認定制度~薬局向け、耐性対策推進へ」(2022/06/08・薬読より)
*5 令和3年3月31日の「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」