かかりつけ医とは何か? もう一度定義が必要
(2021年12月)
11月18日発表の国立感染症研究所の報告 *1によると、「全国の新規感染者数(報告日別)は、今週先週比が0.87と減少が継続し、直近の1週間では10万人あたり約1と、昨年の夏以降で最も低い水準が続いている」とのことで、
日本での新型コロナ感染症の流行は、いったん落ち着きを見せています(11月18日現在)。
とはいえ、ヨーロッパの状況を見ると、第6波はやってくるだろうことが予想されます。
第5波での反省を踏まえ、11月12日、政府は新型コロナウイルスの対策本部を開き「第6波」に向けた対策をまとめ「全体像」を決定しました。*2
それによると、軽症のコロナ患者の自宅療養は、今回の対策でも組み込まれており、経口薬が承認されれば、地域のかかりつけ医への期待はより大きくなるのではないでしょうか。
ワクチン接種でも、「かかりつけ医」は重要な役割を担いましたが、一方で、かかりつけ医を持たない人の存在も明らかになりました。
普段、定期的に通院することがない若者や働き盛りの人たちは、居住地域にかかりつけ医を持たない人も多く、かかりつけ医の再定義が求められるようになっています。
10月20日に開催された厚生労働省の中央社会保険医療協議会 総会(第491回)*3 では、「かかりつけ医」と「かかりつけ医機能」についての再定義について議論されました。
高齢化社会を迎え、国が推進する地域包括ケアシステムを定着させていくためには、「かかりつけ医」の役割は大変重要になります。
実際、診療報酬においても、出来高制の地域包括診療加算や地域の中核病院がかかりつけ医と連携することを評価する包括制の「診療情報提供料(Ⅲ)」が設けられています。
ところが今回の総会では、こうした診療加算が適当かどうかも含め、あらためて議論が交わされたのです。
背景には、地域包括診療料・加算が、近年、届出医療機関数・算定回数ともに横ばいであることが挙げられます。
地域包括診療料・加算を届け出ていない理由としては、「施設基準を満たすことが困難」が最も多く、次いで「算定対象となる患者がいない・少ない」「医師の負担が重い」と回答しています 。
「かかりつけ医」になることで、診療報酬にインセンティブがついているにもかかわらず、そのハードルが高いために、制度が広がっていないことが明らかになったことで、10月20日の総会では、「かかりつけ医とは何か」というより根本的な議論をまず行うべきで、そのうえで厚労省が示した診療報酬項目の議論に入るべきではないかという要望が、支払い側委員から出されました。
当初、「かかりつけ医」と「かかりつけ医機能」は、超高齢化社会に対する医療の在り方として、考えられていました。*4
ところが新型コロナ感染症感染拡大により、高齢者以外にとっての「かかりつけ医」についても考える必要が生じたのです。
実際、新型コロナワクチンの接種においては、かかりつけ医だからこそ様々な患者さんの不安や相談に丁寧に対応できたといえるでしょう。
「かかりつけ医」とは何か、あらためて考える時期に来ているのではないでしょうか。
(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)
*2 日本経済新聞デジタル版(2021年11月12日9:46)配信