本当に10月からマイナカードが保険証代わりに使えるようになるのか?
(2021年10月)
9月22日、厚生労働大臣の諮問機関である社会保障審議会・医療保険部会が開催され、マイナンバーカードを健康保険証代わりに使える仕組みを10月20日から本格的に運用開始することが決まりました。*1
本来は3月下旬からの運用開始を目指していたこの仕組みですが、健康保険組合が把握する個人番号に誤りがあり、数千件にのぼる健保の加入を確認できない事例が判明したために延長していました。*2
この仕組みを利用するためには、医療機関側が専用のカードリーダーを用意しなければなりませんが、すでにカードリーダーが設置され、
プレ運用している医療機関、薬局は3502施設(全体の1.5%)*3 しかありません。
プレ運用はしていないけれど、カードリーダーの設置や院内システムの改修が済んで、導入の準備が整った医療機関、薬局数を見ても12,894施設で、全国すべての医療機関、薬局228,912施設の5.6%に過ぎません。
厚生労働省は、何が何でも10月20日から運用を開始したい意向のようですが、多くの施設で使えない、というのが実態のようです。
こうした背景にはマイナンバーカードの普及を加速させたい政府の狙いがあるようですが、
9月1日時点でのマイナンバーカードの交付数は人口の37.6%*4 。本格運用後、保険証代わりに使う人がどれほどいるのか、まったくの未知数です。
実際、この仕組みが始まると、患者が同意すれば今まで処方された薬の情報を医療機関側が共有できるようになったり、
転職後、保険証の再発行を待たずにマイナンバーカードで受診できるようになる(新保険者のデーター登録のタイムラグなどが生じる場合もある)など、便利になることは確かなようです。
ただ、医療機関は新型コロナウイルスワクチン接種の対応で忙しくシステム改修に手が回らないし、コロナ感染症第6波への対応もしなければなりません。
さらには半導体不足によるパソコンの入手困難が長期化しています。
そして、そもそもマイナンバーカードの普及が進んでいない、など運用に当たっては問題が山積しています。
加えて、マイナンバーカードを保険証として使うには、さらに別の登録も必要になるため、しばらくは利用できる人が限られそうです。
当面は様子を見てから、クリニックサイドも導入を考えてもいいのではないでしょうか。
(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)
*1 「健康保険証代わりにマイナンバーカード、本格運用は10月20日から」SankeiBiz 2021年9月23日
*2 「番号誤り数千件 マイナカード保険証利用、本格運用延期」日本経済新聞2021年3月25日
*3 「オンライン資格確認等システムについて」令和3年9月22日 第145回社会保障審議会医療保険部会、資料2
*4 マイナンバーカード交付状況(令和3年9月1日現在)総務省