これからは、医師にとっても薬局、薬剤師選びは重要になる?
(2021年8月)
来年度の診療報酬改定に向けた議論が、7月14日、中央社会保険医療協議会 *1で始まりました。
厚生労働省は、2016年の改定以降、「かかりつけ薬局・薬剤師」制度の充実を図ってきましたが、実際はなかなか「対物業務から対人業務へ」の転換は進んでいないのが実情です。
2020年度の調剤報酬改定でも、薬剤師のかかりつけ機能の推進のため、重複投薬解消の取組の評価、地域支援体制加算の要件の見直し、同一薬局の利用推進のための評価の見直し等や、また対物業務から対人業務への構造的な転換を促進するために、薬局が医療機関と連携して行う調剤後のフォローアップの評価や調剤料及び効率的な経営を行う薬局の調剤基本料の適正化等が行われました。しかし、かかりつけ薬剤師指導料をはじめとする対人業務の算定率は、依然として低い状況にあります。
中医総会で支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「門前で処方箋を多くさばけば経営が成り立ってしまう。基本的には調剤基本料、調剤料、薬剤服用歴管理指導料、薬価差で経営が成り立っています」と対物業務だけで経営が成り立つ現状の報酬制度の問題点を指摘し、地域包括ケアシステムの一翼担うべく、薬局が地域で果たす「機能」に応じた報酬体系への見直しを進めるべきであるという考えを示しました。
さらに、6月に閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針2021)で明記された、「症状が安定している患者について、医師及び薬剤師の適切な連携により、医療機関に行かずとも、一定期間内に処方箋を反復利用できる方策を検討し、患者の通院負担を軽減する」=リフィル処方(処方箋反復利用)についても議論されました。
この議論は、2022年度の診療報酬改定の焦点の一つとされています。
現在の分割調剤の規定では、①薬剤の長期保存が困難な場合、②後発医薬品を初めて使用する場合、③医師による指示がある場合などに行われるなど、細かく決められており、加えてその処方箋様式は複雑で、使い勝手が悪いなどの理由から普及が進んでいません。
支払側の幸野委員は、「生活習慣病のように病状が急変しない人や長期で同じ処方が繰り返されている方は、医師の判断で処方箋が繰り返し利用できるということも選択肢として考えていくべきでしょう」と述べました。
一方、診療側の城守委員(日本医師会)は、「長期処方は残薬リスク、多剤投与に気付きにくくなるなど、患者の薬物療法と保険財政に対する弊害が多いにもかかわらず、長期処方を助長するという議論の方向には、日本医師会としては従来通りしっかりと反対をさせていただく」とも述べました。
生活習慣病やアレルギーの患者サイドからすれば、薬がなくなるたびに払っていた1000円以上の再診料、処方料が節約となるため、悪いことばかりとは言えない制度です。
しかしそのためには、薬剤師の的確なフォローが絶対条件になることも理解できるため、確かに対物業務中心の現在の薬局、薬剤師では信頼して任せられないという医師の意見にも納得できます。
保険財政が厳しいとはいえ、患者数×単価で経営を成り立たせている医療機関にとっては、単純に受診数が減ってしまうリフィル処方は受け入れられないでしょう。
けれども、診療の質に対して支払われるように診療報酬がシフトしていくようになれば、さらには地域包括ケアシステムが進んでいけば、薬局・薬剤師との連携は欠かせないものになります。
その時に焦らないよう、いまから自分の医療方針を理解し、的確なフォローをしてくれる、優秀な薬剤師を確保しておくことは、医師にとっても重要になってくるのではないでしょうか。
(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)
*1 中央社会保険医療協議会