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オンライン資格確認等システムの導入は進むのか?


(2021年5月)

東京では、3月21日に2回目の緊急事態宣言が解除されてから1カ月も経たないうちに、とうとう3回目の緊急事態宣言が発出されました。
今回は、東京のほか、大阪、兵庫、京都の3府県も対象となりましたが、ワクチン接種、PCR検査の拡充が進まない中、これで変異種の流行が抑えられるかどうかわかりません。

こうした中、3月下旬から開始予定だったマイナンバーカードと健康保険証を紐づける「オンライン資格確認等システム」の本格運用は10月に延期されることになりました*1
この背景には、コロナ禍で医療機関等側に準備の遅れが生じていることもありますが、保険者の登録データに入力ミスが見つかったり、システムの安定性に問題があったりなど、運用側の問題も大きいようです。
さらには、世界的に半導体やパソコンの供給不足が生じていることから、カードリーダーが各医療機関に行き渡るかどうかも怪しい限りです。

デジタル化を推進したい政府は、4月13日に開かれた経済財政諮問会議で、健康保険組合による保険証発行を廃止して「マイナンバーカード」の保険証利用一本化の本格運用を10月には開始したいと提言*2    しました。
健康保険証との一体化だけでなく、2024年度までに運転免許証とマイナンバーカードの連携も進めたい腹積もりですが、実際のマイナンバーカードの交付状況がまだ28.3% *3    にとどまるなか、果たしてオンライン資格確認等が本当に10月に運用開始となるかどうか、不透明な状況です。

オンライン資格確認等システム が導入*4    されれば、患者は健康保険証付きマイナンバーカードを医療機関窓口のカードリーダーにかざすだけで、医療機関等のパソコン端末からその人がどの医療保険に加入しているのか、すぐに照会し回答を得ることができようになります。そのため、有効期間が切れた保険証で受診されることは防げますし、さらには電子カルテのさらなる普及やPHRの構築も可能になるとされています。

しかし、このシステムを導入するための医療機関側の準備として、カードリーダーの設置だけでなく、資格確認用専用パソコンやレセプトコンピューターシステムの改修、さらにはネットワーク環境の整備、電子カルテのシステム改修などが挙げられています。財政的補助はありますが、それだけでは収まらないこともあるでしょう。

コロナ禍の受診控えで、診療所、クリニック等の経営状況が悪化している中でのこの出費は、医療機関にはかなり難しい要求ではないでしょうか。
そもそも4月13日の諮問会議で提言を行った民間議員は経済学者と財界の代表者ばかりです。
コロナ禍の現状がわかっている人ならば、ワクチン接種も進まないこの時期に、新システムを医療機関に導入させるという無謀なことはしないでしょう。
医療機関側の準備が進まない中で、もし保険証を廃止しマイナンバーカードに一本化するようなことがあれば、保険診療の提供にも支障が生じることは目に見えています。
政府にはぜひとも開始時期ありきでない議論を求めたいものです。

(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)


*1 「NEWS オンライン資格確認の本格運用を「遅くとも10月まで」延期―厚労省」日本医事新報社2021年4月10日発行

*2 4月13日 第4回経済財政諮問会議 有識者議員提出資料「デジタル化の加速」資料2-1より

*3 「マイナンバーカードの市区町村別交付枚数等について(令和3年4月1日現在)」(総務省資料)

*4 「オンライン資格確認等システムに関する運用等に係る検討結果について」(令和3年4月版)厚生労働省保険局医療介護連携政策課保険データ企画室

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