コロナ禍でのがん検診の減少はどんな影響を及ぼすか?
(2021年4月)
流行の第4波は来ると思われる――多くの専門家がそう予想するなかで解除された2回目の緊急事態宣言ですが、コロナ専門病院や専門病床の拡充に伴い、一般の病床が減少したり、手術が先送りになったりするケースが増えているようです。
その影響が少しずつ数字になって表れてきました。
2021年3月11日に開催された「がん対策推進協議会」でも、「新型コロナウイルス感染症下におけるがん検診受診状況の変化について」 *1の報告があり、大幅な受診控えが生じていることが明らかになりました。
また、大阪大学医学部医学系研究科外科学講座消化器外科学の土岐 祐一郎教授からは、「新型コロナウイルス感染症下におけるがん診療実施状況の変化について」 *2の報告があり、がん検診減少の影響により、早期の大腸がん・胃がんの手術が減少する一方、大腸がんではステージⅡ~Ⅳ、胃がんではステージⅢ~Ⅳの手術が増えていることが明らかになりました。
実際、新型コロナウイルス感染症の流行拡大により、2020年度の健康診断の受診率は低下しています。
ジョンソンエンドジョンソンが行った「健康診断・人間ドック、がん検診に関する意識調査」調査結果レポート *3によると、41%の人が「コロナ感染症のリスクがあるから」という理由で2020年度にがん検診(肺がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がん)を受けませんでした。
そもそも「新型コロナウイルスの感染リスクがあるから」という理由で、健康診断を受けていない人が43.1%もいました。今年度(2021年度)も同様の理由で受診しないという人は23.0%もいます。
にもかかわらず、「がん検診を見送ることで、がんの早期発見が遅れること」を不安に感じている人が63.1%もいるという結果が出ています。
さらには4割近い人がコロナに関する正しい知識が知りたいと答えており、情報が氾濫している中で、どのようにして正しい情報を得るべきか、悩んでいることがわかります。
こうした人々の意識調査結果を見ると、地域のかかりつけ医として、患者さんが偽情報に振り回されないように、コロナに対する患者さんの情報リテラシーを上げるお手伝いをしていくことも必要なのかもしれません。
そうすれば、コロナ感染を恐れての患者さんの受診控えや、健康診断・がん検診の受診控えも解消していくのではないでしょうか。
これ以上の医療崩壊をしないよう、一日も早くノーマルな生活に戻れるよう、私たちはできることから始めるしかないのだと思います。
(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)
*2.「新型コロナウイルス感染症下におけるがん診療実施状況の変化について」大阪大学医学部医学系研究科外科学講座消化器外科学教授 日本癌治療学会理事長 土岐 祐一郎