コロナ後遺症こそ、かかりつけ医が対応したい!
(2021年3月)
1月8日に発出された首都圏の緊急事態宣言ですが、2月末になってもまだ解除の見通しが立っていません。
流行第3波の収束は、もう少し待たなければならないようですが、ここにきてコロナ後遺症について取り上げられることが多くなってきました。
コロナ後遺症については第1波収束後から報告されていましたが、症例数も少なかったことから世間的な認知度は低かったのです。
ところが、これだけ長く流行が続き、感染拡大したことで、後遺症に苦しむ人々も増加。人々が知ることになりました。
厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第4.1版」 *1にも、
「発症60日経った後にも嗅覚障害(19.4%)、呼吸困難(17.5%)、倦怠感(15.9%)、咳嗽(7.9%)、味覚障害(4.8%)があり、さらに発症から120日経った後にも呼吸困難(11.1%)、嗅覚障害(9.7%)、倦怠感(9.5%)、咳嗽(6.3%)、味覚障害(1.7%)を認めた。
また、24%に脱毛がみられ、発症後約30日から出現し、約120日までみられた。脱毛の持続期間は平均76日であった」 *2
と掲載されました。
これは国立国際医療研究センターに入院していた新型コロナ感染症の患者さんに、退院後に電話インタビューをして詳細に聞き取ったものの報告ですが、注目したいのは、この調査に協力した人の大半は軽症患者さんだったという点です。
この報告を裏付けるように、最近では新型コロナの軽症患者さんが後遺症に悩まされているという症例が、数多く報告されています。
先日もNHKで新型コロナ後遺症に悩まされる方たちを取り上げていました *3 。
このような後遺症に悩む方々の多くは、軽症だったために自宅やホテルで療養し、療養中も医師から投薬を受けることもなく、市販の解熱剤を飲むだけだったようです。
そして1週間から10日間の隔離後、保健所や病院から「もう大丈夫です」と言われ、普通の生活に戻ろうとしました。
ところが、倦怠感や呼吸困難、咳嗽、嗅覚障害などの症状が消えず、日常生活を送るのに困難をきたしているのです。
こうした症状は、ウイルス後疲労症候群や肺や心臓への恒久的障害などであることが明らかになってきましたが、なかなかコロナ後遺症を診てくれる医師はいない、というのが現実です。
ワクチン接種も始まりましたが、いまだ新型コロナ感染症の感染収束が見えない中、「コロナ後遺症」に悩まされる患者さんはますます増えていくだろうことは、容易に想像できます。
そうであるならば、地域のかかりつけ医である診療所やクリニックの医師が、率先してコロナ後遺症の患者さんに対応していくことを考えてもいいのではないでしょうか。
まだまだコロナ感染症についてはわからないことが多いですが、少なくとも、頭痛や倦怠感、味覚・嗅覚障害などの症状にあわせた対症療法をすることはできるはずです。
発熱外来は開けなくても、つらい後遺症に苦しんでいる患者さんに向き合うことができます。
患者減で悩んでいるクリニックこそ、検討してみる価値はあるはずです。
(文責:ブランディング・エディター 内田朋恵)
*1.「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第4.1版」
*2.Open Forum Infectious Diseasesに掲載された日本から初めての新型コロナ後遺症に関する臨床研究報告からの抜粋
*3.NHKクローズアップ現代+ 2021年1月29日