コロナ禍で日本の病院はノックアウトされるか?
(2020年8月)
新型コロナウイルスの感染が止まりません。
7月に入り、首都圏では完全に第2波が到来しているにもかかわらず、病床数の確保がなかなか進まないようです。
収益悪化が明らかになった新型コロナウイルス感染症受け入れ病院に対しては、5月26日より診療報酬の改定が行われましたが ※1、この特例措置だけでは不十分であるという声が医療現場から聞こえています※2。
実際、コロナ禍による病院経営の悪化は深刻で、東京女子医大が夏のボーナス一括カットを発表したことは、大変な衝撃を持って伝えられました。これにより看護師400人が退職希望という報道もありましたが、その後、一転して「支給を検討」と報道されています 。
5月27日に日本記者クラブで行われた会見で、全日本病院協会の猪口雄二会長はコロナ患者入院受け入れ病院の4月の医業利益率が明らかにしました ※3。
それによりますと全国で昨年比▲10.8%、東京都では昨年比▲24.2%にもなるといいます。
さらに7月9日には、医師会病院対象の調査 ※4 も発表されましたが、特に初診料、再診料、電話等の再診についての落ち込みが大きく、2020 年 3~5 月通算の対前年同期比は、初診料で▲36.5%、再診料または外来診療料で▲23.8%ということでした。
これに先立つ6月26日、日本病院団体協議会代表者会議後の相澤孝夫議長(日本病院会会長)は記者会見で、「病院はダウンしている状況で、日本の医療提供体制が崩壊するまでのカウント8、9ぐらい。ノックアウト寸前だ」と述べました。
そして、「単にCOVID-19対応ではなく、この国の医療、診療報酬をどう考えていくかを真剣に考える時期にきているのではないか」 ※5 と指摘しています。
経営悪化は、患者さんの受診自粛が続くクリニック、診療所にも大きな影響を与えています。
6月10日の日本医師会定例会見で報告された「新型コロナウイルス対応下での医業経営状況等アンケート調査」※6 (3~4月分)では、特に無床診療所の小児科と耳鼻咽喉科の減少率が大きく、それぞれ▲39.2%と▲36.6%となることが明らかになりました。
こうした現状を踏まえ、7月15日の定例記者会見で日本医師会の釜萢敏常任理事は、「生活様式が大きく変化する中で、心身の不調を来し、本来ならば受診を必要としている人が、感染を恐れて受診を控えたり、先延ばしをしている状況にある」と指摘し、「予防接種や健康診断のための来院を控えている方も少なくない現状に鑑み、日医として、患者に安心して医療機関に来院してもらえるように、感染防止対策を徹底している医療機関に対して、新型コロナ対策「安心マーク」を発行するための準備を進めている」状況を説明しました ※7。
この「安心マーク」は、日医会員に限らず全ての医療機関を対象としており、日医ホームぺージから各医療機関が感染防止対策のチェックリストの全ての項目を実践していると回答した場合に発行するとしています。
チェックリストの内容に関しては現在、厚労省や日本歯科医師会、日本薬剤医師会と調整中であるとしています。
この「安心マーク」がどれほど病院、診療所経営にプラスになるかは、まだわかりませんが、少なくとも「Withコロナ」の時代に、私たちが感染を恐れて受診控えをすることなく、安心して医療機関に行けるようになることを願うばかりです。
(ブランディングエディター:内田朋恵)
※1 https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000649878.pdf
※2 https://news.yahoo.co.jp/articles/bf966ec4c9dc1ba9cec810c412e5ed2f0d934747
※3 https://s3-us-west-2.amazonaws.com/jnpc-prd-public-oregon/files/2020/05/b671aba9-3e8a-4265-8a37-306402c4be63.pdf
※4 http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20200708_2.pdf
※5 https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/791370/
※6 http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20200610_6.pdf
※7 https://www.med.or.jp/nichiionline/article/009495.html