クリニックは、コロナ感染の疑いがある患者さんは断れるか?
(2020年5月)
コロナウイルス感染の勢いが止まりません。
4月7日、7都道府県に非常事態宣言が出され、人との接触を8割減らすという目標が掲げられましたが、
達成はなかなか難しい状況です。
原則、感染経路がわからない患者さんは、かかりつけ医から保健所等にPCR検査を依頼してもらうという流れが取られていましたが、
実際は多くのクリニックでコロナ感染疑いの患者さんの受診を断っているようです。
中には、発熱外来を設け、コロナ感染疑いの患者さんに対応しているクリニックもありますが、
まだ数は多くありません。
私のかかりつけ医のHPにも、
「発熱やせき・息切れ、強いだるさ(倦怠感)などの症状がある方、または新型コロナウイルスの感染が疑われる方は、
直接受診される前に、最寄りの帰国者・接触者相談センターに電話で相談し、指示を受けていただきますよう、よろしくお願いいたします」
とありました。
ツイッターでは、
「諸般の事情により、発熱やせき・息切れ、強いだるさ(倦怠感)などの症状がある方の診察は
控えさせていただいておりますので、ご理解を賜りますようお願いいたします」
というクリニックの窓口の写真が投稿され、
「これは医師法の応召義務違反なのでは?」というコメントもつけられていました。
しかし、ほかの患者さんと同じ空間に、感染の疑いがある患者さんが来られることのリスクを考えると、
こうした対応も致し方ないのでは、と思われるドクターもいらっしゃるでしょう。
これに対して厚生労働省は4月8日、
「新型コロナウイルス感染症患者(新型コロナウイルス感染症であることが疑われる者を含む。以下同じ。)
の外来診療を行う保険医療機関においては、当該患者の診療について、受診の時間帯によらず、
診療報酬の算定方法(平成 20 年厚生労働省告示第 59 号。以下「算定告示」という。)B001-2-5 院内トリアージ実施料を
算定できることとすること。なお、その際は、「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き・第1版」に従い、
院内感染防止等に留意した対応を行うこと※1」
という通知を出しました。
つまり、新型コロナウイルスの感染者やその疑いのある人を外来で診察した医療機関には、
診療報酬を特例で上乗せできるということです。
専門外来ではない診療所やクリニックでも、
感染が疑われる患者さんには診療時間後に受診してもらったり、
待合スペースを分けたりするなどの感染防止対策を取っていれば、
診療報酬の上乗せの対象になります。
とはいえ、スタッフやドクター自身への感染の心配があり、なかなか踏み切れないとは思います。
ただ、これだけ市中感染が増えてくると、風邪で受診される患者さんの何割かは、
すでにコロナウイルスに感染している可能性も否定できません。
こうした中、東京都の一部の区では、区の医師会と協力の上、独自のPCRセンターを設置し始めています。
地方でもこうした対応が始められていますが、残念ながら全国的な流れにはなっていません。
コロナ感染症では、軽症と思われていた患者さんが急に重症化し死亡するというケースが、埼玉県などでは発生しています。
当初は4日間は様子を見て、という厚生労働省の方針だったのが、
いつもと違ったらなるべく早く医療機関を受診を、に変わるようです。
市中感染が増えている中、ますます地域のかかりつけ医の重要性が増してくることは間違いありません。
無症状の患者さんの受診により、クリニックに院内感染を起こさないためには、
どのように診察を続けていくべきか、早急に対策を練る必要があります。
このパンデミックが収束しても、数カ月後には流行の第2波、第3波が来ると言われています。
初診からのオンライン診療も解禁になりますから、第2波が来たときに慌てることのないよう、
今回のことを教訓に、しっかりと準備を整えていく必要があるのではないでしょうか。
※原稿は4月24日現在の情報を元に執筆しています。
(ブランディングエディター:内田朋恵)