外国人が来院した! どうすればいい?
(2020年4月)
コロナウィルス感染への対応が危急の課題です。当初は、武漢への渡航歴がある中国籍の患者さんが医療機関を受診したことで感染が判明したように、外国籍の患者さんが普通に日本の病院を受診する時代になりました。
実際、政府のインバウンド政策の強化により訪日外国人旅行者数は増加傾向です。それに伴い訪日外国人旅行者が安心して日本の医療サービスを受けられるよう、体制を充実させていくことが必要になっています。
加えて、外国人労働者の増加も顕著です。今後は日本在住の外国人の受診も日常になってくることが予想されます。
こうした状況を背景に、日本医師会の外国人医療対策委員会は、2020年2月21日、「地域医療における外国人医療提供体制のあり方について」という報告書※1を出しました。 報告書では、ワンストップ窓口の強化、医療通訳の充実、キャッシュレス決済の円滑化、健康保険の適用条件の強化などのほか、「在留外国人が地域の一員として生活していく中で、今後のわが国の医療を考える際には、あらゆる場面で在留外国人のことを考慮に入れておく必要がある」と答申しています。
注目したいのは、医療通訳の問題です。課題として、通訳の質の担保、誤訳の際に通訳者を守るための保険への加入、様々な翻訳デバイスの活用などが取り上げられています。すでに救急現場では、電話による医療通訳の普及や消防庁消防研究センターと国立研究開発法人情報通信研究構(NICT機)が多言語音声翻訳アプリ「救急ボイストラ」を開発しているそうです。対応言語も、英、中(繁・簡)、韓、タイ、仏、西、印、越、露、独で、平成30年11月現在、全728消防本部中340(46.7%)で使用開始していると報告されています。
クリニックに外国人が来院して、言葉の問題を含めて対応が難しい場合は、ワンストップ窓口※2へ連絡するのが一番です。医療通訳の問題から支払いの問題まで、医療機関に対して、外国人対応に関する課題への助言や情報提供をしてくれます。
今後ますます増えてくると思われる外国人患者さん。来院されてスタッフがパニックにならないよう、厚労省により作成された「外国人患者の受入れのための医療機関向けマニュアル」※3をチェックしておくこともおすすめです。
とくに、健康保険に加入していない外国人が受診した場合、治療費の概算額を先に提示することは重要であり、適切な費用の算出方法など、このマニュアル書であらかじめ確認しておくと、いざという時に慌てずに対応できるでしょう。 「うちのクリニックに外国人は来ない」と高を括っていられる時代ではありません。どんな患者さんが来ても対応できるよう、準備は怠らないようにしたいものです。
(ブランディングエディター:内田朋恵)
※1 「平成30年・令和元年度 外国人医療対策委員会報告書」
※2 日本エマージェンシーアシスタンス株式会社が、医療機関の外国人患者対応支援に係る都道府県の取組を補完するため、厚生労働省より受託した「医療機関における外国人対応に資する夜間・休日ワンストップ窓口事業」。