スイッチOTCを広げ財政改善。だが、患者ファーストか?保険適用から外す医薬品。
(2019年10月)
8月23日、企業の健康保険組合で構成される健康保険連合会(健保連)は次のような提言を発表した。
●花粉症治療薬におけるスイッチOTC医薬品の流通状況や、医療の必要性に応じて保険償還率を段階的に設定している海外の制度等を参考に、OTC類似薬全般について、保険適用からの除外や自己負担率の引き上げを進めるべきである。
●まずは花粉症を主病とする患者に対して、1処方につきOTC類似薬を1分類のみ投薬する場合は、スイッチOTC医薬品を使用して自ら治療する患者との整合性を図る観点から、当該薬剤について原則、保険適用から除外すべきである。
さらに健保連の提言では、「花粉症治療薬の薬剤費のうち、OTC類似薬のみの処方は約1割で、このうち1分類(第二世代抗ヒスタミン薬、ケミカルメディエーター遊離抑制薬、抗ロイコトリエン薬、抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬、Th2サイトカイン阻害薬、鼻噴霧用ステロイド薬、アレルギー用点眼薬をそれぞれ1分類とカウントする)の薬剤のみが処方された割合は約9割である」「OTC類似薬の保険適用範囲を見直すことにより、全国推計で年間最大約600億円の薬剤費削減効果が見込まれる」とされた。
これを受け、28日に日本医師会(日医)は「スイッチOTC化したからといって、医療用医薬品からはずすべきでない」「軽症患者を保険適用からはずし、重篤な疾患のみを保険適用とする考え方は、経済的弱者の受診抑制、治療が難しい患者の見逃し、受診を我慢することでの重症化などの懸念がある。国民皆保険の崩壊にもつながりかねない」と批判的な見解を発表した。
健保連は、花粉症治療薬の延べ処方日数は83.7%が2週間以内であり、患者の多くは軽症で短期の季節性のものだとしている。しかし、中程度以上の患者には、発症前から1種類の薬を飲み始め、症状が悪化してきたら薬を増やす処方を行う医師が多い。そう考えると、健保連が提出したデータからは見えない患者像がある。
健保連によるこうした提言の背景には、保険財政の悪化とスイッチOTCの利用が広がらないことがあるが、世界に誇れる国民皆保険制度を維持するためにも、日医や患者団体の意見も参考に、患者ファーストの提言を求めたい。
(ブランディングエディター:内田朋恵)