どこまで広まるか?まだ実施1.1%「オンライン診療」
(2019年9月)
1997(平成9)年に「離島、へき地の場合」などでの遠隔診療(オンライン診療)が認められて以来、日本ではオンライン診療といえば、あくまでも対面診療を補完するものとして、離島やへき地の患者を対象に限定的に行われるものと想定されていた。そのため、在宅診療などの日常的に行うオンライン診療については、明確な基準やルール、特化した診療報酬は決められてはいなかった。
ところが、情報通信技術の著しい進歩とオンライン診療に対する現場の要請から、2018(平成30)年度の診療報酬改定において、オンライン診療は保険適用となり、オンライン診療を巡る状況は一変した。 次第に適切な運用ルールが求められるようになり、2019年1月からは「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」が開かれるようになった。そして6月10日、28日の検討会で具体的な見直し案が発表された。
主な見直し案としては、一定条件を満たせば、(1)離島・へき地など医師、医療機関が少ない地域では、初診であってもオンライン診療をすることができる、(2)患者が医師といる場合のオンライン診療 (D to P with D)が可能になる、(3)患者同意のもと、訪問診療を定期的に行っている医師であれば、患者が看護師等といる場合のオンライン診療(D to P with N)が可能になる、などが挙げられる。
この見直しにより、現在、地方やへき地では専門医がいないために診断が難しい難病や珍しい疾病も、D to P with Dを利用して専門医の診断を受けることが可能になるだろう。在宅看護の患者さんも、D to P with Nにより薬の投与以上の医療行為を受けることができるだろう。
しかし、昨年、医療関連サービス振興会が全国4千病院を対象に行ったアンケート(949カ所が回答)では、オンライン診療の実施は1.1%にとどまり、78.7%の病院が「実施予定はない」と回答。利用が広がっていないのが実態だ。
セキュリティーリスクや安定的な通信状況の確保など、まだまだ課題が残るオンライン診療ではあるが、地方の医師不足や医師の長時間労働を解決する可能性がある制度であり、今後どこまで広がるか注視していきたい。
(ブランディングエディター:内田朋恵)