医師の労働時間短縮への緊急取組について
(2019年7月)
医師の長時間労働が問題視されて久しい。
厚生省は、医師の働き方改革に関する検討会を設けて議論を重ねていたが、この3月、「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」が取りまとめられた。
それによると、2024年4月から、医師の残業時間は原則、通常の労働者と同様、月45時間、年360時間となった。ただし、都道府県によって特定された医療機関従事者は年960時間(地域確保特例水準の場合は年1860時間)、さらには努力義務として、連続勤務時間制限28時間、勤務間インターバル9時間などが決められた。
特例水準となる場合の年1860時間の時間外労働とは週にしたら35時間。年960時間でも週18時間の残業となる。わかりやすくするために9~17時の週5日勤務で換算すると、年1860時間なら毎日8時から23時くらいまで、年960時間なら毎日8時から20時くらいまで働くということだ。
診療所や病院の規模にもよるが、もし医師を雇い入れ、在宅医療や訪問診療を視野に入れていたり、夜間診療や休日診療を考えていたりするなら、注意が必要である。月45時間の時間外労働など、すぐに上限に達してしまうからだ。
医師には、診療以外にもやらなければならない仕事はたくさんある。クリニックや診療所なら、初診時の予診、静脈注射、カルテの整理、診断書を書く、薬の飲み方の説明、生活習慣指導などが考えられるだろう。
しかし、これらはドクターでなくてもできることだ。初診時の予診や静脈注射、薬の飲み方の説明、生活習慣指導は看護師、カルテの整理や診断書はメディカルクラークに、ある程度は任せられる仕事である。
将来的には、すべての特例医療機関で年960時間勤務を実現するよう、規制を進めるようだが、人手不足の折、医師の勤務時間を減らすだけでなく、質のいい医療を提供できるよう、看護師やメディカルクラークへの研修の充実をはかっていくことも重要になるであろう。
同時に、医療現場で働く人たちの健康管理も大切である。年に1度の健康診断だけでなく、毎月の疲労度チェックやストレスチェックなどを組み入れた診療体制を組めるよう、病院経営者が考えていくことも今後の課題になるのではないだろうか。
(ブランディングエディター:内田朋恵)