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開業準備「虎の巻」お金のはなし
医師としての生涯。
歩む道の違いでいったいマネープランはどう変わるのか?
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医院開業時のリスクマネジメント その1.休診時のリスク対応
- 万一の病気やけがが開業医に与えるインパクトは?
開業によるリスク許容度の低下に備えるには
今回は、開業後の万が一の時に備え、だれも教えてくれない見落としがちな、開業時のリスクマネジメントについて考えていきたいと思います。
1.開業時のリスクマネジメント
開業時のリスクマネジメントとして、開業資金借り入れの債務保証として生命保険に加入しておくというところまでは、なんとなく提案を受ける機会がある先生もいらっしゃいますが、必要なリスクマネジメントはそれだけではありません。債務保証のために加入する生命保険の入り方については、またの機会にさせていただきたいと思いますが、まずは、開業による環境の変化と、加入する社会保険の変更による影響を、FPの視点で見ていきたいと思います。
病院勤務のときには組合健保・協会健保・共済保険(以下健康保険)のいずれかに加入していると思われますが、個人開業医になると、国民健康保険に加入することになります(医師会に入会されるのであれば、医師国保を選択されるのが一般的)。
健康保険と国保は収入に応じて保険料が計算されるのに対して、医師国保では定額の保険料となり(地域によっては報酬比例となるところもある)保険料の計算方法が異なります。また、自家診療の取扱いや出産手当金など給付内容も異なりますが、最も認識しておいて頂きたいのが「傷病手当金」についてです。

万一、病気やケガで就業不能となっても、勤務医のときであれば、1年6ヶ月間は傷病手当金で、給料(バイト分は除く)の2/3相当額の収入が保障されています(一部の組合健保ではさらに独自の上乗せの保障が準備されていることもあります)。しかし、開業医になり、加入する国保には傷病手当金の制度はありません(医師国保では、少額ではあるが独自の傷病手当金制度を準備する地域もあります)。
開業後に、病気やけがで万一休診ともなれば、まったく収入が途絶えてしまうばかりか、勤務医のときには不要であった、クリニックの家賃や医療機器のリース料、スタッフの人件費などの固定費や、事業ローンの返済などの負担が大きくのしかかってきます。
開業間もない時期であれば、預貯金・運転資金が枯渇するまで何ヶ月持ちこたえることが出来るでしょうか?
体ひとつで収入を得ていて、万一の場合も保障を受けられた勤務医時代とは、「病気」や「けが」が与える経済的なダメージは、まったく異なるということを認識しておかなければなりません。
2.所得補償保険で自助努力の傷病手当金を準備
損害保険の商品に「所得補償保険」というものがあります。
自分の技術・技能・資格をもって商売をしていて、自分が倒れてしまったら店が開けられないという業種・業態の事業主であれば、所得補償保険は必須の保険といえるでしょう。
勤務医を雇用するクリニックであったり、代診が手配できる当てがある場合などは、院長が就業不能となっても短期間は休診せずに凌ぐことも可能かもしれませんが、個人開業医ならば、休診中も固定費や最低限の生活費ぐらいは賄えるように備えておくことが院長/おとうさんの責任といえるでしょう。
「所得補償保険」は、入院中が給付の要件となる生命保険の「医療保険」とは異なり、医師の指示のもと自宅で療養している期間も補償の対象となり、自助努力の傷病手当金制度になります。
「地震によるケガが原因の就業不能も補償の対象となるか」「1回の就業不能に対する補償期間」「保険料の団体割引率」「保険料の無事故戻しの有無」「更新可能年齢」など、加入団体や選択プラン・引受保険会社によって保険料や補償内容が異なりますが、最も重要な所得補償保険の選択ポイントは「更新の取扱い」についてです。
所得補償保険は自動車保険などと同様に1年更新で契約するのが主流ですが、何年間も無事故で更新をしていても、たった一度でも給付を受けると次の更新時には、その疾病群が補償の対象外とされたり、がんなど罹患した病気によっては更新すること自体を拒否されてしまいます。
所得補償保険は契約者にとって理不尽な保険である反面もありますが、1000日分の給付を受けるまでは、無条件で更新ができる商品もようやく発売されるようになりました。このタイプに加入していなければ、健康を害しこれから保険のお世話になろうという時に、更新を拒否されてしまうことにもなりかねません。
所得補償保険は最低限必要な補償額の算出や、加入するプランなど、専門家のアドバイスをうけて、慎重に選択していただきたいものです。
もはや、加入する・しないの検討ではなく、医院経営のランニングコストととらえて、自助努力の傷病手当金を準備して頂きたいです。