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患者に選ばれるかかりつけ医の条件とは?
日本でも導入しようとしている「かかりつけ医機能」
どんなかかりつけ医なら患者さんに選んでもらえるのでしょうか
EPISODE 01
そもそもかかりつけ医って何? イギリスの制度から考える
日本医師会は「かかりつけ医」をどう定義しているか
2022年4月22日、日本医師会の中川俊男会長は総理官邸を訪れ、「国民の信頼に応えるかかりつけ医として」*1 という文書を岸田文雄総理大臣に手渡しました。
この文書は、4月20日付で日本医師会会員へ中川会長の手紙*2 とともに送付されたもので、日本医師会が考える「かかりつけ医」について取りまとめたものです。
日本医師会ホームページ*3 では、「国民のみなさまへ」という項目のなかにある「国民の信頼に応えるかかりつけ医として」で、●日本医師会の思い、●「かかりつけ医」の努め、●地域社会におけるかかりつけ医機能、●地域の方々に「かかりつけ医」をもっていただくために、の4項目を紹介しています。
日本医師会は、「『かかりつけ医』は患者さんの自由な意思によって選択されます。
どの医師が『かかりつけ医』かは、患者さんによってさまざまです。
患者さんにもっともふさわしい医師が誰かを、数値化して測定することはできません」「患者さんに信頼された医師が、「かかりつけ医」になるのです」と明記し、こうした点を重視しているようです。
厚労省が進める地域包括ケアシステムでも、かかりつけ医は重要な役割を求められています。
では、日本で導入しようとしている「かかりつけ医機能」とは一体どういうものなのでしょうか。各国の例を見てみましょう。
「かかりつけ医」をすでに導入している国はある?
日本ではこれから本格的に導入される「かかりつけ医」ですが、ヨーロッパではすでに社会制度として定着しています。
少し古い資料ですが、厚労省が各国のかかりつけ医制度についてまとめた資料*4 がありますので、それを参照しながらイギリスとフランスを例にとって比較してみましょう。
まずイギリスです。 「かかりつけ医制度」といえば、日本ではイギリスの例がよく紹介されます。
イギリスでは、NHS(公的保健医療制度National Health Service)といわれるプライマリ・ケアを基盤とする保険制度が導入されています。
イギリスのかかりつけ医は、家庭医あるいは一般医という意味のGP(General Practitioner)と呼ばれています。
すべての住民はあらかじめ登録したGPの診療所で、原則無料で診療が受けられます。
住民は自由に診療所を選んで登録できますが、患者が大病院での専門的治療を望んでいても、GPが認めない限り大病院を受診することはできません。
その点がフリーアクセスの日本との一番の違いとなります。
イギリスのかかりつけ医は、あくまでもプライマリ・ケアを担うための機能ですので、日本の地域包括ケアシステムに導入したい形に似ていると言えます。
次にフランスのかかりつけ医制度を見てみましょう。
住民はまずフランスの公的医療保険に加入します。そして、保険加入後、公的医療保険加盟医を自分のかかりつけ医(主に一般開業医)に指名します。
何かあれば、まず自分が指名したかかりつけ医を受診し、必要とあればそこから専門医や大病院を紹介してもらいます。
フランスはイギリスと違い、かかりつけ医を受診せずに、直接専門医を受診することも可能です。ただし、その場合は医療費が高額になります。
そのほか、ドイツやオランダ、デンマークもかかりつけ医制度を導入しており、多少の違いはあっても、基本的には「かかりつけ医」を受診しないと大病院や専門医を受診できないようになっています。
厚労省がこれから日本で導入しようとしている「かかりつけ医機能」も、基本的にはこれらの国々と同じシステムになると考えられますが、病院へのフリーアクセスが常態化している日本では、かかりつけ医を通さなければ大病院を受診できない、という制度へのアレルギーは大変強いと思われます。
また東京都医師会のように、診療科ごとにかかりつけ医を持つという考え方もあるようです。*5
いずれにせよ、かかりつけ医の導入が不可欠であるならば、どのようなシステムが日本の医療制度に合致するのか、まだまだ検討の余地はありそうです。
(文責:ブランディングエディター 内田朋恵)
参考文献
*1 「国民の信頼に応えるかかりつけ医として」
*2 日本医師会「国民の信頼に応えるかかりつけ医として」について
*3 日本医師会ホームページ
*4 「各国のかかりつけ医制度について」
*5 東京都医師会ホームページ「かかりつけ医を持っていますか?」