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開業準備「虎の巻」お金のはなし
医師としての生涯。
歩む道の違いでいったいマネープランはどう変わるのか?
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医師としてのキャリアプランと家族のライフプランの現実的な交点の検証
開業時期を先へのばした場合は?
- 10年後の開業で変わるCFとライフプラン実現の可能性
1.開業までの収支
それでは、まず、開業までの10年間を見ていきましょう。 奥様の離職とお子様の進路を変更しないのであれば、先生の収入は1500万円程度は必要となります。二人目のお子様が生まれて教育費が増大してくるころまでには、1800万円程度の収入が必要となりそうです。
勤務先を探すうえでは、この収入を確保することも念頭においてください。 病院からの収入だけでは、必要な収入を得られないのであれば、採用条件でオンコールの回数なども確認しておかなければ、バイトで補うこともままならなくなってしまいます。
CF表の収入では、病院からの給与を1200万円、その後毎年3%の昇給。バイトは300万円の定額としました。 この収入を確保できれば、開業を10年後とした場合でも何とか支出を賄えるといったところでしょうか。 出来れば、教育費がかさんでくる40歳ぐらいまでには、開業されるとCFは改善されそうです。
また、スキルや資格の取得を最優先にお考えの場合、どうしても収入が伴わないのであれば、お子様の進路は中学受験とするなど、ライフプランの変更が必要でしょう。
2.開業後の収支
さて、開業後の収支ですが、 専門医を取得し特色を出したクリニックを開業されたいとのことですが、 糖尿病などの専門外来を標榜しているクリニックでは、診療単価が一般内科の2倍近いようです。その反面、処置室や点滴室などのスペースや、高齢者等の患者に対して効率的な診療を行うために、患者さんが衣服のボタンを留めたり診察室から退室するのを待っているのではなく、先生が2つの診察室を掛け持ちする広いレイアウトが必要になり家賃負担は増えるのかも知れません。
これらを加味していくときりがありませんので、ここでは前回の事業計画をそのまま用いて見ていきたいと思います。
勤務医時代の収入がこの見込みのとおりだと、10年後の開業では、貯蓄残高が200万円台まで低下してしまうこともある計算となりますので、車の買い替えは先送りにするとしても、運転資金に余裕がない状態となりそうです。 なんとか、開業まで今年度の貯蓄残高の1500万円を増やしておきたいものですね。
事業ローンの返済の終わる64歳までは、診療日数や診療時間も短縮せずにバリバリ働けば、開業後のライフプランは成り立ちそうですね。
3.セカンドライフの収支
セカンドライフの収支はというと、勤務医の期間が長くなったため老齢年金が増加していますが、やはり、年金だけで生活をしていくのは厳しいといえます。
この試算では、ほとんど貯蓄が出来ていない状況になっていますので、少なくとも67歳ぐらいまでは働かなければ、老後の収支は合わなくなりそうです。
開業医の場合は、健康さえ維持できていれば、就業期間を延ばすことで、調整は可能と思われます。ひと昔まえは、保険医定年制なんて噂もありましたが。
今回の開業後のシミュレーシンでは、08年度の開業医の平均年収2521万円を下回った収入での試算となっています。
個体差が大きく、その理由も定かでありませんが、FPに相談にこられる開業医の方では、ご主人の収入が3000万円〜5000万円。奥様が800万円〜1500万円の収入を得られている方が多いようです。30代〜50代の働き盛りの年代では、公表された平均値よりはるかに高い収入を得られている方も多いように思います。10年後の開業を見据えて、今からきちんと計画し収入面を確保するなどの準備ができれば、思い描くライフプランの実現も可能ではないでしょうか。
またの機会に、予想以上の医院経営となり、「医療法人を設立する場合」のシミュレーションもしてみましょう。
10年後の開業でも、なんとかライフプランの実現が見込めたところで、次回は財前先生が万一の場合でも、家族の生活を守るために、「万一のキャッシュフロー分析」をしてみましょう。
(文責)ファイナンシャルプランナー 松木祐司