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医院開業時のリスクマネジメント その1.休診時のリスク対応

  1. 自宅の罹災とクリニックの罹災では、まったくリスクの質が異なります。しかし、その対策は?

休診のリスクは院長の体に起因するものだけではありません。
今回は院長の健康上の理由ではなく、クリニックの罹災による休診のリスクについて考えていきたいとおもいます。


1.休診のリスクは他にも!!

以前、罹災した翌日と思われる歯科クリニックの前を偶然に通りがかったことがあります。幸いにもボヤ程度で鎮火した模様でしたが、クリニックは消火活動のため水浸しで、カルテは散乱し、壁はすすけ、焼け焦げた悪臭を放つ無残な状態となっていました。 ボヤ程度であっても、診療再開までにはかなりの期間を要してしまうことを再認識させられました。

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院内から出火した模様で、出火した時間帯や原因までは解りませんでしたが、その当時は、歯科医院が集中的に診療所あらしに狙われ、金品の強奪だけではなく、火をつけて出ていくという凶悪事件が発生していたので、ここもなのか?という恐怖感が脳裏をよぎったのを覚えています。

クリニックは、飲食店と同居する雑居ビルや、自宅との併用建物などでなければ、罹災の心配は無いとたかをくくる院長も多いのですが、日本の火災の原因は放火(放火の疑い含む)が長年上位にランクインしています。また、上階の消火活動による水濡れや、アクセルとブレーキを踏み間違えた患者の車がクリニック内に突入、交差点やカーブ付近に立地するクリニックに、事故の弾みやスピードの出しすぎで車が飛び込む(炎上)といった事故も起きています。近年ではゲリラ豪雨による浸水・水没などの被害に遭うクリニックも増えています。

民法第709条には、『故意又ハ過失ニヨリテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス』とあり、故意や過失によって他人の権利や財産に損害を与えた場合は損害賠償責任が発生し、当然被害者に対してその損害を賠償しなければならない。ところが、「失火の責任に関する法律」では、『民法第709条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス<抜粋>』となっていて、失火によって他人に損害を与えた場合は、失火者に「重大な過失」がある場合にかぎり賠償責任を負うものとされています。

ようするに、日本においては、重大な過失がない限り火元責任なしというルールであり、近隣からの類焼や上階での消火活動による水濡れで損害を被っても、法律上賠償請求は出来ません。天災による損害も誰にも請求しようがないし、車の飛び込みであっても、夜間に起きた事故であれば、逃げてしまい相手が特定できなかったり、任意保険に加入していない車であった場合には、補償を受けられる保証はありません。


2.罹災時には「物的」損害と休診により「収入が途絶える」損害が!

万一、罹災したのが自宅ならば、建物や家財道具の復旧費用が総合型の住宅保険で賄えれば経済的な損失は回避できます。しかし、クリニックが罹災したとなると、「造作」や「医療機器」などの「物的」損害だけではなく、休診により「収入が途絶える」損害が同時に起こります。物的損害の大小にかかわらず、復旧までの日数が長引けば、その損害は拡大していきます。

テナント開業の場合、復旧期間は自分ではコントロールできませんし、最短で復旧工事が行われる保証はありません。飛躍した話かもしれませんが、大家が相続対策のためにこの際、更地にしてしまえと思うかもしれないし、十分な火災保険に入っておらず、復旧したくても資金準備ができないかも知れません。また、火災で建物が滅失すれば賃貸借は終了します。仮に建物の一部が残っていて修繕可能でも、多額の費用がかかるなら、全体として建物の効用が喪失したとして契約終了が認められてしまった判例もでていて、移転を強いられるかもしれません。
復旧するのを、今か今かと指をくわえて待っている間も、スタッフの人件費などの固定費や、事業ローンの返済などは待ってはくれません。


3.リスクに備えるために必要なのは?

クリニックのリスク対策としては、物的損害に対する補償と、休診中の診療報酬の補償をセットで準備しておくことが必須と言えます。
しかし、契約する保険をチェックすると、「内部造作」や「医療機器」など、目にみえる「物」は補償の対象とされていても、休診を余儀なくされた場合の診療報酬までをカバーしていることは極めて少ないようです。 いざ罹災すると、金銭面もさることながら、精神的なダメージは大きく、無残な状態となった診療所を目の当たりにして、平常心でいられる院長はいません。

「店舗休業補償保険」は、人件費など固定費を捻出するだけではなく、平常心を取り戻し、冷静に対策を講じるまでの時間を稼いでくれるでしょう。

収益が見込める設備投資のための借り入れであれば、金融機関から融資をうけられたとしても、損害の穴埋めのための融資は容易くはありません。まして開業直後の罹災であれば、手を差し伸べてくれるところは無いと思った方が賢明といえます。 患者が殺到していた時代では、多少の問題が発生しても、損失の穴埋めをするのに十分な勢いがありました。しかし現在では、抱えられるリスクの限界は小さく、医院経営にリスクマネジメントは重要なファクターとなっています。


4.クリニックの休業補償は?

店舗休業保険は、ビル診の場合、1日20万円の粗利益(診療報酬から材料費・光熱費などをマイナスしたもの)を、休診期間1年間まで補償して、年間保険料は1万8千円程度(地域や建物の構造により異なる)です。なぜこの保険が普及していないのか疑問です。

この保険では、火災・爆発・落雷・風災・水災・物体の飛来、落下、飛び込み・公共施設(電気・ガス・水道)の事故などによる休診に粗利益を補償してくれますが、感染症による休診の補償も追加しておきたいものです。

「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」に規定する感染症によって、クリニックへの立ち入りが制限または禁止され休診を余儀なくされた場合でも、粗利益の補償が受けられるものです。
2002年のSARS騒動以降の教訓ですが、鳥インフルエンザや西ナイル熱など新たな脅威も迫っています。

保険会社や商品によっては、感染症による休診は補償を受けられないものもあるので、加入に際しては専門家のアドバイスを受けて、慎重に選択して頂きたいと思います。

(文責)ファイナンシャルプランナー 松木祐司

執筆者紹介

松木 祐司
FPアソシエイツ&コンサルティング株式会社
ファイナンシャルプランナー
  • CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。
  • 外資系損害保険会社・外資系生命保険会を経て、特定の金融機関に所属しない独立系ファイナンシャルプランナーとなる。
  • 主にドクターとご家族のライフプラン実現のための、資産運用設計、保険設計、相続対策や医院経営のリスクマネジメントに取り組む。

【著書・寄稿】
得する保険の選び方 いまこそ見直そうあなたの保険 退職金がっちり運用 他
ジャミック・ジャーナル、クリニックマガジン、日本歯科新聞、日本経済新聞、 週刊東洋経済、 週刊エコノミスト、マネージャパン、 あるじゃん 他
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