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クリニックの事業収支をケース毎に比較検討どうなる収入!

手取り収入の多寡につながるなぜ?を解説


この選択が分かれ道!一般的な人件費率も念頭に。

人件費(診療体制)の試算、コントロールについては勤務医時代 には考えもしなかった分野かと思います。
しかし、収入の多寡に関係なく決まった支出となる固定費、その 大半を占める人件費の戦略は経営に大きなインパクトを与えます。
後編では、クリニックの経営状況を表した表を並べてみました。 2人の先生方の開業から3年間の取組、経営姿勢が反映された表ともいえます。 開業初年度の人件費で2倍以上の違いがでている点に注目してください。

―2つのクリニックの比較表 ―

■経営数値 (金額単位:千円) EFクリニック比較表拡大→
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Eクリニックの誤算

誤算要因1  人件費戦略のミス

院長は開業にあたり、自身の目指す診療に専念出来る環境を整えたいとの思いが強く、事務方を任せられる事務長を置くこととしました。また常勤で看護師1名・事務2名、さらに看護師やフットケアの専門職をパートで3名採用して盤石の体制をとったのですが、この人件費が固定費として大きく財務上の負担を招くことになりました。

  • スタッフはいずれも経験者で給与水準も比較的高く設定。事務長は会社総務の経験が長い知人の女性に依頼。さらに開業コンサルタントの薦めで、社会保険完備とする等高待遇の条件を設定したため応募者多数となり、院長の希望条件に合う人が採用できた。
  • しかし、人件費は毎月大きい支出となる一方、患者数は計画を下回って推移し、次第に時間をもてあますスタッフの現状に院長は不満を募らせるようになった。
  • 開業半年後、資金不足の不安が現実的になり、遂に人件費の削減を決断。事務長は知人という事もあり雇用条件の変更を言い出せず、常勤の看護師に雇用条件を変更してパート勤務への打診をする。
  • 院長の説得が上手くいかず看護師は雇用条件の変更を拒否、退職やむなしのスタンスでいたところ、なんと事務長を除き他のスタッフも全員退職する事態に発展。
  • スタッフ不在は急遽知り合いのクリニックの助けで、不完全ながらも何とか乗り切ったが、トラブルの影響は患者さんにも大きく影響し、さらなる来院数の伸び悩みに繋がった。

誤算要因2  メディカルモールの選定

  • 物件選定の際、オーナーからは他のフロアに複数のクリニックが入る「ビル型メディカルモール」として運営すると聞いており、開業時には1階に調剤薬局が入り、Eクリニックは2階に入居してスタートした。
  • 開業後、物件見学はあるが他クリニックが決まらず他に医療機関のない結果に。駅近だがメイン通りから外れていて意外に人通りが少なく、スペースが約25坪とやや狭いため、内科などが敬遠した。
    当初、広告・集患や相互紹介など、メディカルモールのメリットを期待して選定したが、見込みが外れてしまった。

Fクリニックの成功要因

成功要因1 スタッフ構成力

F院長は、開業当初は収入が見えないことから人員体制に慎重なスタンスでした。

  • 開業時の人員は看護師・事務とも全員非常勤で6名採用。事務は全員受付兼診療助手を担当し2名ずつの交代。院長がシフト管理し人件費を極力抑えて運営した。一時的に手が足りない事もあったが、忙しくても充実感があるよう院長自らが声掛け対応。常に収入拡大の先行する安全な体制が維持できた。

成功要因2 地道な増患対策

  • 個々の患者さんの環境や生活を重視して患者満足度の高い丁寧な医療を提供することを目指した運営。また適度な広告宣伝とともにモール内の連携もうまく噛み合って比較的早く地域の認知度が上がり、地域の医療機関との連携も緩やかにすすめることができたたため、地域で信頼できる皮膚科専門医としての評価を得ることに成功した。

ワンポイント:分析と改善戦略

今回の事例は、収入とともに人件費=人事戦略の考え方について紹介いたしました。 Eクリニックは、開業当初院長の希望をそのまま形にし、スタッフを多く配置したのに対して収入が伴わず、体制維持が難しくなってその後人員削減の厳しい選択をせざるを得ない状況となりました。そこにはストレスのみならず解決のための出費も嵩むことになり、さらに友人関係であった元事務長とは当然ながら以後疎遠となるなど、あらためて人事戦略の失敗を痛感したものです。

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一方Fクリニックの方はスタッフに過度な期待をしないで最小限度の陣容とし、軌道に乗るまでは社会保険も含めてシビアにコントロールしました。そして必要度を吟味したうえで増員を行い、現在は漸く常勤事務1名を採用していますが、院内の体制は依然院長自らがしっかり把握し差配しています。

収支で最も重要なのはいうまでもなく「収入」ですが、新規開業は見込み通り患者さんが集まらないケースを想定し、少ない収入でも対応できるよう固定費を極力抑えてスタートすることが肝要です。そして固定費のうち最も重要でかつコントロール可能なものが人件費といえます。開業後暫くは体制維持のため人件費が先行することから初年度は人件費率が30%前後となることも珍しくありませんが、皮膚科(無床・院外調剤)の一般的な人件費率は10〜15%程度、自費割合が高い場合等は10%を下回ることもあります。
過剰人件費は収支全体を悪化させ、そのことは先生の不安・不満とともにスタッフ満足度の低下に繋がり、ひいては患者満足度に大きく影響します。事業計画の段階で2年目以降の収入増をある程度堅めに想定し、 その中で上記比率で収まる人件費を想定して目標に早く到達する体制づくり、採用計画を実践することが重要です。採用については基本的にはやはりパート採用を中心に発展的に考えていくことがクリニックの人件費戦略の原則になると思われます。

連載第1回の医業収支の仕組みと着目したい計算書の項目でも無床・院外調剤の内科系クリニックの人件費標準値について記載しておりますのでご参考になさってください。

(文責:税理士法人アフェックス

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