開業のケーススタディ

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医療モール内の連携強化

第5回目では、医療モールでの開業についてご紹介します。 医療モールでの開業は、駐車場など共用スペースの活用が できることや、複合クリニック集合体ゆえの高い集患能力 などから数年前より注目をあつめています。 「成功」する医療モールの鍵は、どこにあるのでしょうか!?

医療モールに高い集患効果を期待したがー眼科クリニック紹介

新患が増えず頭を悩ませていた院長が気づいた点は?…

眼科クリニックのケース

Eクリニックの概要

項目 内容
標榜科目

眼科

院長

男性 48歳

開設日

平成21年4月

所在地

東京都郊外

クリニックの概要

クリニックモール2階(診察室1、検眼室1、手術室1、準備室1)

専用駐車場

専用15台

交通アクセス

最寄り駅(JR)から 車で10分

スタッフ

看護師1名、他5名(ORT、OMA、受付事務)

経営形態

個人

Eクリニックの環境等

Eクリニックは東京郊外のJR駅から車で10分の距離にある医療モール内の眼科診療所です。この医療モールは5階建てビルの2階にあり内科、整形外科、小児科、精神科、皮膚科も開設されており調剤薬局は1階部分で開局しています。
所在地周辺は戸建住宅とマンションが混在している住宅地であり、年齢層は若年層が急増しているものの中高年層並びに後期高齢者世代も多いことから、白内障患者を多く見込める環境にあり、自院の特徴のひとつに「白内障の日帰り手術」と考えていた院長にとって開業地を決める大きな要因となりました。
また、オペ室を備えるに必要となる約50坪の面積が確保できたことと、医療モールとして15台の駐車場が確保されていることもこの物件での開業を決断させました。
駐車場については、診療所ごとに専用台数分の費用を負担しているものの、駐車スペースは診療所ごとに特定されていないため混雑時を除けば患者さんが困惑することなく円滑に運用されています。
近年、空きスペースが目立つ新規医療モールを目にしますが、当モールは竣工前に全てのテナントが決まっており竣工後2ヶ月の間に全診療所が開設されました。これは、診療所側にとって好条件の賃貸物件であったこと、診療圏調査が好結果であったことに加え、新規開業医師にとって医療モールが持つ高い集患能力への期待が根強いことをうかがわせます。
4月最初の大安の日に開業日を同じくしたしたEクリニック、T内科、K整形外科、S小児科は前週に合同内覧会を実施しました。来訪された人数は約150名にのぼり各診療所の期待を大きくした内覧会となりました。

Eクリニックの収支状況

月間数値 直近の実績 当初事業計画

一日あたり患者数

19 人

45 人

診療単価

6,500 円

9,000 円

医業収入

272 万円

891 万円

薬品費等

14 万円

53 万円

人件費

86 万円

100 万円

家賃・リース料

43 万円

43 万円

その他経費

33 万円

40 万円

差引利益

96 万円

655 万円

借入返済

31 万円

31 万円

差引収支

65 万円

624 万円

Eクリニックの開業当初の患者数は1日あたり20名前後、また白内障手術は月に5例程で推移していましたが、以降、外来患者数は30名を越える日はあるものの、当初から体制を整えていた手術数は開業当初からあまり増加していません。

Eクリニックにとって「日帰り手術」は医業収入を大きく左右するものであり、手術数・その確保は重要なテーマですが、まずは基本となる外来患者数をいかに増加されるかが当面の課題といえます。 院長はモール形態に集患効果を期待するものの、先ず自院が患者さんから選ばれる診療所でなくてはならないとの思いから、開業当初から分りやすい丁寧な説明を心がけていました。特に、白内障の患者さんに対しては年齢や社会的立場を考慮した治療方法を詳しく説明し、手術を選ばれた場合にはご家族同席のもと、改めて20〜30分の時間を設けていました。また、職員も親切な接遇と院内の整理整頓や清潔感の維持を実践しており、総じてEクリニックに特段の問題は感じられません。

一方、患者さんがモール内の医療機関を選択するのは、各々の医療機関に対する安心感に加え、ひとつの建屋に出向けば複数の診療所を受診できるという利便性といえますが、ここで重要なことは各医療機関の連携体制をいかに築くかの点にあるといえます。

逆に、連携を実感できない医療モールは単なる医療機関の集合体でしかなく、患者さん、医療機関双方の期待に応えられない箱ものになる危険性を抱えることになります。

新患が増えず対策に頭を悩ましていた院長はふと、“モール内の連携”について思い至り、その点で不安を抱いた院長は隣接するT内科医院を初めて訪ね、自身の思いを伝えると共に、T院長の考えをうかがうことにしました。

総括

ここをきっかけとし、両院長は連携に向けて動き出すこととなりました。また、開発にかかわっていたコンサルタント会社、調剤薬局がどのようにそれに加わっていったのか、その顛末については後半でご紹介します。

(文責:税理士法人町山合同会計)